がんは進行すると他の部位に転移します。最初に転移するのがリンパ節です。乳がんの場合は、手術前に外来で「超音波検査」「MRI検査」「CT検査」といった画像検査が行われます。その検査で、脇の下のリンパ節(腋窩リンパ節)に転移がないと思われるときに、「センチネルリンパ節生検」を行います。がんが最初に転移するリンパ節の検査で、がんの転移があるかないかを、手術中に取って顕微鏡で調べます。

脇の下のリンパ節への転移の有無は今後の再発を知るため、また治療法の選択という点から最も大切な要素です。手術中に取ったセンチネルリンパ節をチェックし、そこに転移がなければそれ以上リンパ節の切除は行いません。転移が見つかった場合は「郭清」と言って残りのリンパ節をきれいに取ります。これは手術中に判断して行います。もし転移があり、郭清術が必要となった場合、センチネルリンパ節生検よりも1時間程度長くなります。

リンパ節郭清をすると、20%程度の患者さんに「腕のむくみ」「脇の下の痛み」などの後遺症が出ることがあります。センチネルリンパ節生検のみですめば後遺症のリスクはぐんと低下します。

なお、乳房温存手術の場合は、術後に放射線照射が必須となるため、センチネルリンパ節に転移があったとしても残りのリンパ節は切除しなくてもよいことがあります。それは、放射線のおかげでリンパ節再発率や生存率が変わらないからです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)