乳がんでは「術後放射線療法」も重要な3本柱の治療の1つです。術後放射線療法は2つの場面でお勧めしています。

1つ目の場面は、乳房の一部分だけを切除して乳房を残すことができる「乳房温存術」後に、残した乳房に対して行う放射線照射です。残した乳房の中にまた乳がんが出てくることを「乳房内再発」と言いますが、この確率を30~25%くらいに減らすことが分かっているので、乳房温存術の場合は原則として必ず行います。

ただし、良い条件がそろうと、放射線をかけるメリットが少なくなることがあり、メリットとデメリットをバランスにかけて判断することがあります。例えば、「高齢者」「ホルモン薬が効くタイプの乳がんで術後にホルモン薬を内服する」「がんがきちっと取り切れている」といった場合は、元々の乳房内再発の確率が低いので放射線照射によって減らせる乳房内再発率も少なくなります。ただし、メリットがゼロになるわけではないので、主治医とよく相談してください。

2つ目の場面は、乳房を全摘する「乳房切除術」を受けた後です。4個以上のリンパ節に転移がある場合や皮膚にがんが広がっている患者さんでは、胸壁に放射線の照射をお勧めしています。術後放射線の照射が生存率をよくする、と報告されているからです。

術後放射線の照射は、月曜から金曜までの週5日を5週間、25回行うのが標準の照射期間で、1回の照射時間は数分です。ただし、多忙で25回通院するのは難しいという患者さんには、短期照射があります。1回の放射線の照射量を少し増やし、照射回数を17回に減らします。ここは医師と十分話し合ってください。

そして、放射線の副作用としては、「少し胸が固くなる」「赤くなる」ことがあります。赤くなった場合でも半年程度で良くなります。患者さんから「髪は抜けますか?」とよく聞かれますが、胸に対する放射線では髪が抜けることはありません。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)