乳がんを再発させないためには、患者さんの乳がんのタイプに合った薬物療法を行うのが重要ポイントです。

「ルミナルA」と「ルミナルB」は女性ホルモン受容体のある乳がんで、薬物療法ではホルモン薬が効くタイプ。ただ、ルミナルAはホルモン薬だけで大丈夫ですが、ルミナルBは悪性度が少し高いので、ホルモン薬単独ではなく抗がん薬をプラスすることで治療効果が高くなります。両者の区別は明確にできるのではなく、両者は連続的に分布しているため、ルミナルAとルミナルBとの境界に存在しているがんもあります。また、がんの顔つきや細胞分裂などいくつかの要素から判定するため、要素によってはおとなしいものと悪性度の高いものが混在していることもあり、判断が難しいのです。

そんな場合は、「多遺伝子パネル検査」を--。がん細胞の中のいくつかの遺伝子を調べて、がんの悪性度をもう1歩踏み込んで調べる検査です。多遺伝子パネル検査にはいくつかの検査があり、中でも代表的な検査が「オンコタイプDX」で、ホルモン受容体陽性の乳がんが対象となります。オンコタイプDXは乳がんの手術でとった組織を調べ、遺伝子の変化を点数化することで「再発リスク」と「抗がん薬投与の必要性の有無」がわかるのです。低リスクと結果が出れば、ホルモン薬だけで良く、高リスクの結果の場合は抗がん薬を追加することでホルモン薬だけよりも再発率が大きく低下します。できれば抗がん薬は使いたくない人がほとんどだと思います。しかし、使った方が再発を減らせるのであれば使うべきですし、どう選択すべきかの判断に、この検査は力をかしてくれます。

そのほか、ホルモン受容体陰性の場合にも使える「マンマプリント」という多遺伝子パネル検査や、国内で開発された「キュアベスト」という検査もあり、再発リスクを予測するのに役立ちます。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)