近年、日本では予防の概念が浸透し、幼少期から学童期にかけての子どもの虫歯は減少傾向にあります。生えて間もない歯は大人の歯のような十分な硬さを備えておらず、軟らかいのが特徴です。石灰化(唾液中のミネラル成分などを吸収し徐々に硬くなる現象)が完全に進むまでには、生えてから3~4年かかると言われており、その間は特に気を配る必要があります。しかしながら定期検診に足しげく通っていただいても、保護者が虫歯の成り立ちや留意点を十分に理解していなければ防ぎきれないというのも事実です。以下の2点を押さえてください。

一つ目は、生活環境の見直しです。虫歯は習慣に左右される病気なので、家族で同じような食生活をしていれば、歯の軟らかいお子さんだけが虫歯になるということも考えられます。寝る前2時間の飲食は要注意です。また、周りにいる人がこまめに歯を磨く習慣がないのに、子どもだけを押さえつけてケアしようと思っても嫌がって当然です。家族全員が歯を大切にする心がけは、虫歯のない子どもを育む第1歩です。

二つ目は、フッ化物の適切な応用です。子どもに発生する虫歯の大半が、歯ブラシが届かない臼歯(奥歯)の溝から発生するということがわかっています。口を開けたときに見える表面の溝を指しますが、顕微鏡レベルで確認すると毛先が奥まで入っていかないほど細かいのです。このため、リスクが予測できるお子さんの場合は、予防的にこの溝を埋める「シーラント」という処置を歯科医院で提案することがあります。歯を強く硬くしてくれるフッ化物は、家庭でも安全に扱えて簡便に虫歯予防ができる重要アイテムです。子ども用の歯磨剤はフッ化物配合を選びましょう。