生活習慣病を放置すると、心筋梗塞といった血管が悪くなるだけでなく、心臓機能も低下していく。本来の働きができない状態を心不全といい、急に悪くなると突然死につながる。が、慢性的に機能が低下していく慢性心不全もある。

「生活習慣病など心臓病のリスクがあるときは、心不全の前段階のステージAと考えます。心筋梗塞や弁膜症などで心臓の動きが悪くなると、前心不全のステージB。ステージAやBは、心不全につながる『隠れ心不全』といえます」とは、東京都健康長寿医療センターの原田和昌副院長。循環器専門医・地方評議員、高血圧専門医・評議員などの資格を有し、心臓病の診断・治療・研究を数多く行っている。

「隠れ心不全の段階であれば、心不全を回避することが可能です。ぜひこの段階で、食生活の見直しや適切な治療を受けていただきたいと思います」

たとえば、弁膜症は、心臓の弁の開閉がうまくいかなくなる病気だ。心臓は弁で血液の逆流を防ぎ、全身に血液を送り出している。弁の開閉がうまくいかなくなると、血液の流れは悪くなり、心臓に負荷をかけ続けることで心不全に至る。しかし、よほど進行しないと自覚症状に乏しい。聴診器で心臓の音を聞いたときに雑音が混ざることで、弁膜症の早期発見につながる。

「弁膜症の進行を止めるには、生活習慣病予防に加え、適度な運動が効果的です。理由はわかりませんが、適度な運動習慣を持つことによって、中等度の弁膜症では進行がある程度止まるのです。運動習慣を持つようにしましょう」と原田副院長はアドバイスする。