ここまでで、皆さんはかなり「ガンマナイフをもっともっと知りたい!」と思っていただけたでしょう。そこで、ガンマナイフはどのような機器を使って行っているのかを紹介します。ガンマナイフは正式には「定位放射線治療」と言い、治療台に患者さんは横になり、頭にアルミ合金のフレームをピン固定して筒状の装置に頭を入れます。

その装置は、同心円状多方向から192本のガンマ線が1カ所に集中するのです。たとえば、太陽光線を虫眼鏡で黒い紙の1点に集束すると、黒い紙は燃えます。そのようにガンマ線を1カ所に集中させるのです。1点だけをたたいて他には影響を与えない。治療部位が頭の奥であっても、ガンマナイフはピンポイントで届きます。

そして、患者さんの頭をピン固定するときは、痛みを感じないようにきちっと麻酔をして行います。そのため、「痛い!」と訴える患者さんは少ないです。最新のガンマナイフの「アイコン」という機器はピン固定ではなく、通常放射線治療と同様にマスクで固定できるようになりました。痛みに極めて弱い方は、病状にもよりますが、その機器で行う選択もできます。

マスク固定が行えるようになった本当の理由は、痛みの回避だけではありません。今まではピン固定ゆえ、1回のみの高線量照射機器であったことから、3センチを超える大きな腫瘍は適応とはなりませんでした。しかし、最新機アイコンでは、あらたにCT(コンピューター断層撮影)と赤外線による監視システムが搭載されたことにより、数日に分けて照射することが可能となり、適応がグンと広がりました。精度はピン固定の0・1ミリに比べれば1・5~3・0ミリと劣る一方、大きいがん脳転移やその他の脳原発悪性腫瘍(グリオーマ)なども適応に加わり、有力な治療へと進化したのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)