定位放射線治療の「ガンマナイフ」の症例が最も多いのは、「転移性脳腫瘍」です。その転移性脳腫瘍のガンマナイフの適用条件とは-。それは、<1>基本的には腫瘍が3センチ以下、<2>1~2センチの腫瘍でもすでに脳がむくんでいる、<3>小さくても脳の最も重要な部分である脳幹部などに腫瘍ができている、の3つです。

この適用条件から外れるとガンマナイフでの治療はできないかというと、今はかなり進化してきました。転移性脳腫瘍の大きさが3センチ以上でもガンマナイフでの治療はできます。ガンマナイフの最新機器「アイコン」が登場したことで、頭のピン固定がマスク対応になりました。それにより、ガンマナイフの照射が数日に分けて行えるようになったからです。適用条件が大きく変化してきているので、ガンマナイフを行っている医師に患者さんが率先して相談に行くことが重要です。

その相談のタイミングで悩む患者さんもいます。適切なタイミングは、転移性脳腫瘍がみつかったらすぐに-。私たちはどんな状況でも対応できます。腫瘍が大きかったら分割照射をしますし、小さくて個数があるのであれば、どの腫瘍から優先して治療をするかを考えます。今の患者さんの全身状態と人生設計を考えて対応します。私から言わせれば、おにぎりにゴマをふったようなもの。まったく恐れるに足りません。

標準治療は放射線での「全脳照射」ですが、これでは2年後には認知機能障害が約半数で出ます。早ければ3カ月後くらいから出てくるケースもあります。私は、「したい人生」をかなえるために、認知機能を守りたいという気持ちで診療を行っています。だから、転移性脳腫瘍と診断されたら、何をさておき、ガンマナイフの施設を訪ねましょう。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)