頭を切らずに治す定位放射線治療の「ガンマナイフ」。ガンマナイフ適応疾患として、ここまでに「転移性脳腫瘍」「脳動静脈奇形(AVM)」を紹介しました。今回からは、ガンマナイフ適応の「髄膜腫」を知ってもらいたいと思います。

髄膜は頭蓋骨の内側にあって脳を包んでいる膜で、3層構造になっています。外側から「硬膜」「クモ膜」「軟膜」。ここにできる腫瘍が髄膜腫です。ただ、髄膜腫はどの膜にもできるのではなく、硬膜にのみできます。硬膜が腫瘍化して脳を押すような形で存在するのです。その髄膜腫は良性腫瘍なので、基本的に年間1~2ミリ程度しか大きくなりません。ただ、髄膜腫の10%程度は非典型的髄膜腫といって、成長速度の速いもの、がんに近い悪性髄膜腫もあります。

そして、髄膜腫は「テント上病変」「テント下病変」に分けて考えます。「テント」とは、大脳と小脳を分けるところをいいます。テントより上の病変がテント上病変、テントより下がテント下病変です。

テント上病変は、基本的にまず手術を考えます。テント下病変で小脳や脳幹に近い場合は、手術の難易度を考えると最初からガンマナイフと判断するケースもあります。それは、「髄膜腫が奥にあって手術が難しい」「患者さんが高齢」という場合で、ガンマナイフがファーストになります。ただし、髄膜腫が大きい場合は手術を考え、手術後の髄膜腫の残存に関してはガンマナイフで対応するケースが多いです。

髄膜腫の基本対応は、3センチを超えるものだったり成長性のものだったりすれば、まず手術を優先して考えています。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)