「聴神経腫瘍」は耳の奥のバランスをつかさどる前庭神経に発症する良性腫瘍です。対応は「経過観察」「ガンマナイフ(定位放射線治療)」「手術」。では、手術とガンマナイフのどちらが多く行われているのか-。欧米ではほぼ半々ですが、私たちは状況が許せばガンマナイフを優先しています。

それは患者さんの聴覚温存に対する希望が強いときに限ります。神経鞘(しょう)からできているこの腫瘍は、手術を行った時点で聴覚が脱失してしまうことがほとんどです。だから、手術では基本的に聴力の温存は考えません。その結果、片方の耳が聞こえなくなりますので、なかなかつらいところがあります。

私たちの施設がガンマナイフの適応患者さんが多くなっているのは、どこに聴神経腫瘍があり、どこから発症したかなどを細かな細胞学に照らし合わせて詳細に把握するよう努力しているからです。MRIとCTの画像をフュージョンすることにより、MRIではわからない蝸牛(かぎゅう)や三半規管などの骨内構造が分かるようになります。その後、治療シミュレーションを施し、最終的にガンマナイフの適応がハッキリと外来でわかります。CTはMRIより位置的な信頼性が高い検査なので、私たちは必ず使って治療の精度を高めています。

診断が的確につくので、耳が完全に聞こえづらくなる前に早くに受診してほしい。それには人間ドックを受けるようにする。もしくは、「突発性難聴」とか「めまい」が起きたときにきちっと耳鼻咽喉科を受診し、MRI検査までたどり着いて欲しい。聴神経腫瘍が原因のことがあるからです。早期に発見すると、耳が聞こえなくなるのを防ぐことができます。