「下垂体腺腫」は成長ホルモンなどホルモンの中枢に発症する良性腫瘍です。治療は、まずは「手術」で、中には「薬物療法」で対応できるケースもあります。手術後に腺腫が「残存する」「再発する」ことがあると、リリーフとしてガンマナイフ治療を行います。良性腫瘍なので、手術後半年は空けてガンマナイフを1時間程度の日帰りで行います。

ガンマナイフのやり方はこれまでに紹介した方法と同じで、患者さんの頭にフレームを装着し、患者さんは筒状の装置に頭を入れて横たわります。そして、0・1ミリ単位で治療計画をたて、0・1ミリ単位で治療を行っていきます。この時の治療成績は、下垂体腺腫の種類によって異なります。前回紹介したように、下垂体腺腫には「機能性下垂体腺腫」と「非機能性下垂体腺腫」の2つがあり、非機能性下垂体腺腫に関しては、腺腫の境がわかりやすいこともあり、ほぼ100%腺腫の成長を止めることができます。

一方、機能性下垂体腺腫は浸潤性のあるものもあり、すぐ隣に位置する海綿静脈洞に浸潤してしまうと、たとえ細かな画像であってもガンマナイフでの治療範囲が困難なケースもあります。機能性下垂体腺腫の80%はコントロールができますが、残り20%に関してはガンマナイフでも再発の可能性があります。ただ、20%で再発があった場合は、再度ガンマナイフで治療をすれば問題ありません。最終的に100%とれなくてもほとんどの症例でコントロールはできます。

そして、海綿静脈洞は脳神経がクモの巣のように内部に張り巡らされた血液の土管のような構造で、腺腫との細かな解剖学的把握が勝負となります。さらに、異常ホルモン値の正常化も治療に必要なので、より高い放射線量が必要です。まさに腺腫と各脳神経を0・1ミリ単位で避けて治療計画を立て照射しています。最近は後遺症が出ることなく、ほとんどの患者さんで満足のいく結果となっています。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)