「ガンマナイフ」が適用になっている疾患で治療数が多いのは「転移性脳腫瘍」「髄膜腫」「聴神経腫瘍」「下垂体腫瘍」などです。そして、2021年にガンマナイフの最新機種を導入したことで、これまで適用外だった大きな脳腫瘍や「グリオーマ(神経膠腫=こうしゅ)」などの治療が適用になりました。今回は、そのグリオーマを紹介します。

グリオーマは悪性脳腫瘍の1つ。脳や脊髄を構成する神経膠細胞から発生する代表疾患です。特に悪性グリオーマに対してガンマナイフが適用にならなかったのは、脳周囲へ浸潤傾向が強いため、画像所見から明確に範囲がわからなかったからです。そのため、ガンマナイフを行ってもすぐに再発します。また、1回照射では後遺症として脳の腫れが出やすい特徴もあり、ガンマナイフは使わないのが基本でした。

それが、ガンマナイフの最新機種の導入でガラッと変わったのです。マスク固定での照射が可能となったことで、グリオーマなど悪性度の高い脳腫瘍に、今日、明日、明後日という具合に寡分割照射が可能になりました。この場合、1回あたりの照射量をかなり低減できるので、照射範囲をより広くでき、さらにPET(陽電子放射断層撮影)を用いることで、より明確にグリオーマをたたけるのです。

加えて、独自のプロトコールにて分子標的薬「ベバシブマブ」と合わせて治療を行います。これにより放射線障害予防とさらなる抗腫瘍効果を得ることで、余命1、2カ月と言われていた患者さんの中には、半年以上再発もなく元気にされている方がいます。悪性グリオーマに対する“ガンマナイフ寡分割照射+ベバシブマブ治療”は、「手術も放射線も抗がん剤もやりつくしました」と言われた患者さんを対象に、私たちは「最後まであきらめず」に行っています。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)