ガンマナイフの治療は「脳腫瘍」などばかりではなく、人間の3大疼痛(とうつう)の1つ「三叉(さんさ)神経痛」も保険適用です。“地獄の痛み”と言われる三叉神経痛の「三叉神経」とは、顔の半分の知覚と側頭部の筋肉(咬筋=こうきん)を支配している神経のことです。特に顔面は上(おでこ)、中(上顎)、下(下顎)の3つの領域に分かれているので“三叉”神経と名づけられています。三叉神経痛はこの領域のみに起こる激しい発作性の痛みです。

その原因の多くは、血管による神経への強い接触と圧迫。これによって顔面や口内への小さな刺激が強く増幅され、脳幹を介して大脳へ“激痛”として伝わります。患者さんは「麻酔なしで歯を抜いて、出てきている神経に火箸を突っ込まれるような激痛」と訴える人が多い。加齢に伴う動脈硬化性の変化が主因とされ、65歳以上の高齢者に多い疾患です。

三叉神経痛は消炎鎮痛薬で治る痛みではなく発作なので、私たちは“三叉神経のてんかん”と捉えて治療を行っています。1度収まると激痛発作が出てこないこともあれば、また出てくることもあります。発作の間隔は最初長いのですが、ちょっと悪化すると激痛発作が、ずっと持続する人もいます。毎日、1日に何回も激痛発作が起こる人もいます。こうなると治療です。

私たちは、まずは「薬物療法(カルバマゼピン)」で対応します。独自の投与法により、まず70%は奏功します。それでも無効な場合、年齢が75歳までであれば、神経を圧迫している血管を外す手術「微小血管減圧術」を勧めます。この手術は、耳の後ろの頭蓋骨を開けて、神経と血管を外すもので、手術時間は3、4時間です。短時間とはいえ頭蓋底手術は難しい部類の手術なので、高齢者には向きません。では、ガンマナイフの適用はどうなのか。それは次回に-。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)