“地獄の痛み”と言われる「三叉(さんさ)神経痛」は顔面に生じる激痛です。

治療は、まずは「薬物療法」で対応し、薬物療法でコントロールできない場合で75歳以下なら「手術」。そして、その次の治療として出てくるのが定位放射線治療の「ガンマナイフ」です。ガンマナイフ治療は2015年から「難治性の三叉神経痛」という条件で保険適用になりました。

私たちのところでガンマナイフを受けられるのは、「薬が効かない」「手術ができない」「75歳以上で手術を受けたくない」という方々です。75歳以上としているのは、ガンマナイフによる三叉神経痛の効果期間、作用機序がまだ解明しきれていないからです。手術では血管と神経を離します。しかし、ガンマナイフ治療では血管と神経は離れません。くっついたまま何かを触った時に、そこで増幅されて発作的に痛いと感じます。神経そのものに照射し、異常通電を起こさないよう神経の性質を変えてしまう治療と考えられます。

ガンマナイフ治療は神経に強く照射することはしません。神経が壊れる一歩手前の照射量で対応しているので、感覚は残り、発作痛だけが消えます。そして、治療から1年で90%が治癒し、10年で60%の方が治癒したままです。しかし、「顔がしびれる」副作用が25%に見られ、中でも「異常なほど顔がしびれる」副作用は12・5%に見られます。この副作用の症状は常に付き合うことになるので、この副作用が出た患者さんの満足度は低い。しかし、最近の長期成績では「異常なしびれ」は3%にまで下がっていることがわかりました。今、ガンマナイフ治療の適用を少しずつ広げています。

日本では51施設でガンマナイフ治療を行っていますが、三叉神経痛など治療成績は異なります。どの施設が良い成績を出しているかを確認し、治療を受けるようにすべきです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)