「三叉(さんさ)神経痛」の顔面に生じる痛みは、“地獄の痛み”と言われるほどの激痛です。治療は「薬物治療」「手術」、そして、定位放射線治療の「ガンマナイフ」が行われています。三叉神経痛に対するガンマナイフ治療は、初期では90%の方が治癒する一方、10年後の治癒率は60%。つまり、30%は再発してくるので、今後どのように対応すべきなのでしょうか。

私どものところでガンマナイフ治療を受けた患者さんは、再発する頃は大方80歳を超えています。そこで「手術をしますか」となると、極めて厳しい。それなら、「もう1度ガンマナイフ治療をしましょう」ということで、行っていました。ところが、最近ガンマナイフ次世代機と注目されている「ZAP-X(ザップエックス)」という新しい定位放射線治療機器が登場したのです。

実際、三叉神経痛のガンマナイフ治療から10年後に再発したA子さん(84歳)に、私は「ガンマナイフ治療をしましょう」と言いました。患者さんは「金属製の枠をピン固定するのが痛いから、うーん……」と、苦しそうな顔をされていました。「それならZAP-Xを行いましょうか。まだ三叉神経痛に関しては保険適用ではないのですが、いいですか」と聞きました。すると、「自費でもそれを受けたい」と。A子さんの了解を得てZAP-Xで治療をしました。すると、その日に痛みが消えました。A子さんは効果が特別に速かったのかもしれませんが、他の患者さんも速くに痛みが消えています。一方、合併症である「顔のしびれ」はガンマナイフと同等です。

そのZAP-Xはエックス線ベースであり、かつピン固定が不要なのです。しかし、精度はガンマナイフ同等の0・19ミリ。一方で、よりシャープな照射とより高い照射出力(ガンマナイフの4倍以上)であり、これからが期待されます。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)