手、首、声のふるえなど、症状として「ふるえ」が起きる病気はいくつかあります。とりわけよく知られているのが「本態性振戦」。そして「ふるえ」及び「固縮」「動作緩慢」「姿勢保持障害」など、4大症状の1つとして知られているのが「パーキンソン病」です。このふるえでQOL(生活の質)が低下し、本人が生活に不自由を感じているのであれば治療が必要です。

治療は「薬物療法」「定位脳手術」、そして定位放射線治療の「ガンマナイフ」が一般的に行われています。薬物療法では、興奮を伝達するアドレナリンというホルモンをブロックする「β遮断薬」を使います。ふるえの残る人には「抗不安薬」。また「抗てんかんの薬」なども効果があります。

薬物療法でコントロールできない人は、局所麻酔での定位脳手術が行われます。頭蓋骨の頂上部分に穴を開けて脳深部の視床に電気針を挿入。そして、視床の核部分に電気を通して焼きます。すると、患者さんが手術中に手に持っていたペンのふるえが止まります。

高齢、また、いろいろ薬を服用していて手術適用にならない患者さんは、ガンマナイフ治療になります。穴を開けて行う手術を、穴を開けずに行うのがガンマナイフ治療です。手術で焼く部分にガンマナイフで放射線を照射して治します。ただ、ふるえが消えるのに約半年かかります。手術は即日で効果が出るので、その点に大きな違いがあります。“頭に穴を開けたくない”“半年待てる”患者さんはガンマナイフ治療を考えると良いでしょう。

さらに、ここにきて「FUS(ファス=収束超音波療法)」が行われ始めました。MRIで視床核部分を見て、そこに焦点を合わせて超音波を当てると、ピンポイントで破壊できるのです。2019年に保険適用になったこともあり、選択肢が増えたといえるでしょう。当科では機能脳神経外科班・堀澤士郎医師が中心となり、治療適用を決めてすべて行っています。少しでもふるえが気になる方は、ぜひお尋ねください。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)