大腸がんの早期発見の第1歩は「便潜血検査」です。では、便潜血検査の当たる確率は100%なのか、というとそうとは限りません。研究報告によると、便潜血検査(2日法)の大腸がんに対する感度は53~100%と大変ばらつきがあります。報告は高い数値ですが、臨床現場からは「がんがあるのに陰性と出る人もいるので“私は陰性だから大丈夫”と絶対に思い込んではいけない」と言いたい。

50代のA男さんは、最近、私の外来を受診されました。A男さんは毎年きちっと便潜血検査を受けていて、ずっと陰性でした。ところが今年、突然陽性に-。「一応、大腸内視鏡検査を受けておこう」と受診されました。内視鏡検査を行うと約7センチの腫瘍が上行結腸(右側の大腸)にありました。ただ、7センチではあったものの大腸の粘膜にとどまっている早期がんだったので、当院では内視鏡治療で切除できました。A男さんはラッキーでした。でも、A男さんは「毎年、便潜血検査を受けていたのに、何で大きい大腸がんなのだ!」と納得できない様子でした。

これは、A男さんだけではなく、しばしば実際に起こっていることです。その1つの原因は、大腸の左右で違いがあるからです。大腸の右側の上行結腸は、出血しにくいので便潜血検査では陽性にならないことがあります。便は小腸から大腸に入るので、右側はどろどろの液状便で、それが左側に行くにしたがって水分が吸収されて塊になっていきます。左側は塊となった便が大腸の壁をこするので、右側に存在する腫瘍よりも陽性になりやすいのです。右側はただ水が流れるような状態なので左側と比べると陽性になりにくい。だから、右側は発見が遅れるので、内視鏡治療ができる状態で発見されるのは30%程度しかないといわれています。

こういうことも知って、便潜血検査だけではなく、40歳を超えたら「大腸内視鏡検査」をぜひ受けてください。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)