大腸がんの早期発見には「便潜血検査」、そして、「大腸内視鏡検査」が重要になります。大腸内視鏡検査を受けて何もなかった人は、ガイドラインでは「次の内視鏡検査は5年後」となっています。それは、大腸がんの成り立ちがそれくらいゆっくりとできていくので、5年に1回内視鏡検査を受ければ“生命は必ず助けられる”というスパンです。ただ、5年に限ることなく3~5年を目安に受けるのがお勧めです。内視鏡で検査・治療をしている私も、3年に1度受けています。そして、便潜血検査で陽性の場合は必ず内視鏡検査を受けましょう。それも、陽性にもかかわらず今まで1度も受けたことのない人は、絶対に!です。

私の患者さんのB男さんは、今年、便潜血検査が陽性だったので内視鏡検査を受けました。大腸にはまったく問題はありませんでした。そのB男さんが来年も便潜血検査で陽性だった場合、皆さんはどのような行動に出るべきと思いますか。「便潜血検査が陽性だったので内視鏡検査を2年連続で受けるべき」と思う人は多いでしょう。私は、その患者さんには、「基本的には、内視鏡検査は2年続けて受ける必要はありません」と言っています。もし3年目も便潜血検査が陽性だったら、その3年目に内視鏡検査を受ける判断をすると良いと思います。

ただ、大腸内視鏡検査を行う医師の技量には、やはり差はあります。さらに、大腸内視鏡検査の難しいところは、大腸は屈曲が強い臓器だという点です。その曲がり角のところは、腫瘍が見逃されやすいことが分かっています。また、大腸がんの特徴ですが、LST(側方発育型腫瘍)という横に広がる平べったい腫瘍があるので、それはかなり技量のある医師でないと見つけるのは難しいのも事実です。実際1回の大腸内視鏡検査では、10~20%の見落としがあるとも報告されています。この見落としが心配な患者さんは、私がB男さんに勧めたやり方ではなく、2年連続で内視鏡検査を受けるのが良いでしょう。その時は、これまで以上に上手な医師の検査を受けるべきです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)