手術で大事なのは医師と患者さんが互いに最善を尽くすことです。患者さんがすべきことは、前回紹介した「術前準備」ともう1つ、「術後訓練」です。
今は“身体に優しい手術”に進化し、手術が終了するとすぐに人工呼吸器の管を抜くので、自分で呼吸ができます。そして、痛みも少ないので翌日には自然と歩けます。術後訓練では、「呼吸訓練」と「歩行訓練」が重要で、医師などの指導の下、手術の翌日から行います。早くに動いてもらって痰(たん)を出し、肺炎を予防します。よく動くと脚の血栓予防にもなります。口からの水分摂取も手術の翌日から飲むことができます。ただし、医師が見ているところで水分を摂取してもらいます。それも訓練だからです。
食事は、術後5日までに熱が出たということがなければ、5日後から始めます。術後の調子が良ければ、5日目くらいからおなかがすいて食べたくなるのが自然です。
食事をした患者さんは、食べ物が口から身体に入る流れ方の違いに気づきます。最初は、飲み込み方とか食べ方の練習です。術前までは、食べ物を飲み込むと背骨の前、身体の後ろ側をポンと落ちていったのです。それが術後は、身体の前側を通っていきます。つまり、心臓の後ろを通って落ちていた食べ物が、心臓の前を通って落ちていくのです。水を飲むことでその感覚を覚えてもらいます。それが、物を食べる感覚に生きてくるのです。これも術後訓練です。食事はおかゆから始め、問題がなければ10日以降は普通食になります。患者さんの食べたい量を食べてもらいますが、小分けにして食べるようにします。
もちろん、食べ方の指導は行います。「よくかんで、40分以上の時間をかけて食べてもらうのが基本。早食いは禁止」。食後はなるべく寄りかからずに2時間上体を起こしているのが理想です。ここも医師や看護師がついて指導をします。(医学ジャーナリスト・松井宏夫)

