加藤酒造店/佐渡市
「『はっ!』ではなく『ほっ』とする酒を目指しています」と話す加藤社長

 佐渡にある5蔵のラストを飾るのは、「金鶴」の銘柄で知られる加藤酒造店。1915年(大4)に創業し、2年前に創業100周年を迎えた。廻船問屋から酒造りを始め、現在の加藤健社長は酒造業4代目となる。

 創業の地である本店は真野湾を目の前に臨む地にあるが、蔵は本店から車で20分ほど離れている。創業の地は水に恵まれず、運搬やろ過などの苦労を重ねてきたため、良水を求めて93年に蔵を移転。廃業した酒蔵から譲り受けたその地には、佐渡を代表する名峰、金北山と妙見山の伏流水が地下30メートルの井戸から湧き出る。

 酒の成分の80%は水だ。このきれいな軟水を使った普通酒から、純米大吟醸までの定番5種類と季節商品を製造する中で、加藤社長が迷わず選んだ今回の1本は、定番中の定番「本醸造 金鶴」。麹米に地元産の五百万石を使い、上品な米の旨みを感じつつ、料理を引き立てるすっきりとした味わい。晩酌酒として地元で愛され、県外にも熱烈なファンを持つ。

 水とともに、米への思いもこの蔵を語る上で欠かせない。原料米は昨年からオール佐渡産に切り替えた。蔵人の1人が米農家でもあり、蔵人栽培の「たかね錦」を使った純米酒「拓(ひらく)」や、地元JAとともに研究会を作り取り組む自然栽培米の「越淡麗」を使った純米大吟醸「上弦の月」などを商品化している。本や映画にもなった「奇跡のリンゴ」と同じ無肥料、無農薬の自然栽培により、米が持つ本来の力を最大限に引き出すことができる。

 収量は減り、あぜの草刈りなどの手間も計り知れないが「トキのえさ場となる佐渡の普通の自然環境をつなげていきたい。何より生き物がいっぱいいる田んぼは気持ちいいですよね」と加藤社長はほほ笑む。自然との共生への思いが地酒という形で、多くの人に届けられていく。【高橋真理子】

[2017年7月1日付 日刊スポーツ新潟版掲載]