今季、守護神再挑戦を明言している阪神藤川球児投手(38)。現在、日米通算227セーブを記録しており、名球会入りとなる通算250セーブまで「23」と迫っている。ただ、本人は「自分自身は、どんな記録にもあまり興味がない。それより、バッターを三振にとりたいなとか、次アウトをとりたいなと考える方が興奮する」と個人記録の数字には無関心な様子。そんな中、藤川投手が確認している数字を発見。その真意に迫った。

記録を打ち立て、花束を受け取っても藤川は「(個人)記録には、あまり興味がないです」と語ってきた。ただ、そんな藤川がひそかにチェックしている数字があった。それは「防御率」だ。

「(シーズンを通して)数字が動くので、面白いですよね。マラソンをしているみたい。それに、自分で設定を決められるので」

そう語ると、藤川は表情を緩めた。「他の記録は、(一度)行ったら、もう通り過ぎる。野手のヒットもそうで、何本ってのは消えない。でも防御率というのは、そうじゃない。バッターで言うと、生涯打率みたいなもの。面白いですよね、ゴールがないから」。自らで設定値を決めることができる。

「(防御率が)悪くなるときは、自分を戒める。そのときに、『自分のキャリアがこれでいいのか? 』とか考えて、もうひと踏ん張りできてきた。去年の開幕戦でも、岡本くん(巨人)に3ランを打たれて、27・00から防御率は始まった。『うわ、どうしよ』と自分でも思った。(防御率が)動くのはそういう意味で面白い。(振り返ると)そのときの自分のメンタルって相当苦しいんだろうって。ないもんね、そういう自分を競わせてもらえるところは、他に」

どんなに抑えてきても、点を取られれば、積み上げた功績は崩れる。過去にとらわれずストイックな藤川と同じように防御率は、今を生きる。

「野球と同じように深いですよね。終わりがないから。いつが終わりなのか、いつになれば極めるのかなといつも感じるけど。それがないから面白い」

記録への執着心を表には出さず、数字を気にするシーンを見せない藤川が、意外な一面を見せた瞬間だった。【阪神担当=真柴健】