鳴尾浜球場-。ウエスタン・リーグ公式戦とはいえ、この場は1軍ペナントレース同様、生死をかけた戦場となっている。1軍と2軍。確かに別々に戦ってはいるものの、チームはひとつだ。極端にいうなら、ファームはボロボロになっても、1軍が頑張って日本一になれば目標は達成されたことになる。

 阪神-広島の3連戦が行われた。この時点で広島の1軍は苦しみながらもトップを走っていた。何事でもそうだが、己の立場がいい位置をキープすると、どうしても現状を守っておきたくなるのが人間の性。怖いのは戦力の低下であり、今回はそのチーム力を整えておく必要性がのしかかる中でのゲームだった。広島がうった手は横山、福井、大瀬良の順番で、実績のある3選手を先発させて救世主の出現を求めた。同チームの現状を考えた場合最善の策だが、結果は今季就任した水本2軍監督を取材してみた。

 広島がペナントを勝ち取るための条件は、ピッチャーの絶対数だろう。なぜなら、もう皆さんご存知だと思うが、今シーズンから「マエケン」ことエース前田が大リーグへ移籍した。抜けた穴は並の穴ではない。大きな、大きな、大きな穴がぽっかり空いた。現在は黒田、野村、ジョンソンを中心にした先発陣と、クローザーの中崎が頑張ってなんとかいまの位置をキープしているが、あとに続く投手が出てこない。今回の鳴尾浜は、1軍ローテーションの一翼を担うための復活。という願いを込めた3投手ののマウンドだったが、結果は“戦力”として期待しがたい内容だった。まだペナントレースの先は長い。レース展開はどう変わってわからないが、一度調子を落とした選手の復調は想像以上に厳しい。水本監督の評価は「そのとおりで、当然戦力になってもらわないといけない投手です。厳しいですね」だった。

 初戦は新人の横山だ。ルーキーとはいえ、すでにひのき舞台で2勝している。注目してみたが、スピードガンの球速は130キロ台がほとんど。ストレートに球威は感じられない。変化球のコントロールもいいはずだが、球筋は定まらない。6イニング投げて被安打7。奪三振3。与四球3。失点3。自責点2。数字が示す内容はさほど悪いとは思えないが、同監督の話は「まだ、本当に1軍で通用するだけの力は持っていません。今季入団した新人ですからもっと、もっと鍛えて安定した力をだせるようにならないと」と厳しかった。

 2戦目は昨年1軍で9勝(通算23勝)をあげ、3人の中では最も実績を誇る福井だった。調子のいいときであれば、相手を上から見下ろして手玉にとるだけの実力はあるはずだが、球は高めに浮く。微妙なコントロールにも欠ける。これでは実力は下の選手が相手でも苦しい。案の定、初回にいきなり2点を奪われるなど、5回には横田に2ラン。陽川にソロの連続ホームランを打たれた。7イニング投げて被安打9。奪三振4。与四球2。失点、自責点5。本来の実力を発揮できず「球がどうのこうのという前に、マウンド上での闘争心見られない。やはり相手との戦いですから、もっとバッターに向かっていく姿勢がほしい」と水本監督。1軍復帰はまだむずかしいようだ。

 最終日は大瀬良である。入団した年には宣言どおり新人王を獲得。オフには前田道場に入門。いろいろ投球術を学んだ。同先輩から後継者に指名されたほどだが、マエケンの後を継ぐのにはほど遠いピッチングだった。ストレートの球速は140キロにみたない。球威もない。この日の内容では救世主を期待するのは無理だ。同監督「ここまで悪いとは思わなかった。この状況が続くようなら、もう一度いちからやり直さないとダメですね。例えば、期間を区切ってミニキャンプを張るとか、した方がいいと思う」表情を引き締めた。ちなみに内容はというと、2イニング。被安打5。奪三振2。与四球0。失点、自責点は3。みるべきところはなかった。

 救世主を期待して先発したピッチャーは全滅。広島にとっては厳しい結果しか残らなかった。かといって目指すは優勝にかわりない。この時期の断念などありえない。ウエスタンという戦場でファームに与えられた指名とは…。1軍の戦力低下を防ぐこと。「我々も仕事ですから」。水本監督がどんな手を打つのか。見届けたい。

【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)