中日のドラフト3位・篠崎国忠投手(20=四国IL徳島)のピッチングが圧巻だった。1軍昇格も望めそうな内容。あとは低めをどれだけ意識できるか。とても楽しみな素材に会うことができた。
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試合前、中日の投手コーチと少し話す時間があった。そこで「今年の投手はどう?」と軽く聞いてみた。すると、2人のコーチがそろって即座に答えてくれた。「篠崎がいいんです。真っすぐが強いんです。見ておいて下さい」と。
こちらからの問い掛けに対する返答だったので、「まあ、そうなのかな」と思ってスタンドで試合に見入った。すると、最終回にその篠崎が登板。となると、がぜん興味が湧く。じっくり見させてもらった。
真っすぐが強いと聞いていたため、私の中でのハードルは若干高めになっていたかもしれない。投手コーチがそこまで言うのだから、光るものがあるのだろうと。その分だけ、実際見てみると予想内の印象に終わるものだが、篠崎の真っすぐには、確かにやや特別な性質を感じた。
まず、フォームを見て思い描いたのが元メジャーリーガーの大塚晶文だ。典型的なオーバースローで、投げ下ろすという表現がぴったりだった。最速96マイル(約154・5キロ)で、真っ向勝負という豪快なピッチャーだった。
篠崎は193センチ、105キロの堂々たる体格。スケールの大きさは抜群だった。それ以上に驚かされたのは、まさに真っすぐの強さだった。最速156キロ。確かにベース板で落ちない球威は見応えがある。投手の球威というのは、球速をバロメーターにする方もいると思うが、私はベース板でどれだけ打者のバットを押し込めるか、そこに注目してきた。
捕手の特性として、ベース板上での球威とバットのぶつかり合いを体感できる。タイミングがあっていても、球威が勝ればバッターは押し込まれ、打球のひと伸びが足りなくなる。つまり、速球派の球威は、ベース板での強さが生命線とも言える。その強さの片鱗(へんりん)が篠崎にはうかがえた。
打者3人をフォークで一ゴロ、カーブで遊飛、インコース真っすぐで捕飛と、申し分ないピッチングだった。何よりも真っすぐで空振りが奪える魅力は大切だ。高めまっすぐで2度空振りをさせている。ほぼベルト付近で空を切らせているのは、なかなかスリリングだが見応えはあった。安定して153~156キロと、球威も出ていた。
そしてカーブが良かった。落差あるカーブで、自信を持って投げているし、しっかりカウント球として機能していた。フォームも真っすぐとカーブで遜色ない。これならば、緩急として十分に効果が発揮できる。強い真っすぐと、落差あるカーブ。この組み合わせは往年の江川さんをほうふつとさせる。こういう部分でも将来性を感じさせてくれる。
そしてフォークがちょっと特徴的だった。カーブとは異なり、フォークはお世辞にも落差があるとは言えない。あまり落ちないフォークと言えばいいか。ただ、若干軌道が安定しないところからすれば、チェンジアップという役割にも映る。真っすぐが155キロ前後、カーブが120キロ前後、フォークが137、8キロ。球速のバラツキも理想的だ。これはおもしろい存在だと感じた。
1軍の投手スタッフの状況にもよるが、1軍昇格のチャンスもあるのではないか。そう感じた。そして、ここからはさらに高いものを求めたい。さきほど、ベルト付近でのボールの強さを評価したが、さらに打者を苦しめる真っすぐに成長するには、ボール2、3個分、低く投げることができれば、これはもうかなりのボールになる。
低めに、そしてベース板で強い真っすぐこそ、打者がもっとも手を焼く。篠崎の球威で、さらに低く低くを求めたら、十分に1軍でも結果が期待できるだろう。ただし、ベルト付近で強いボールを投げるからと言って、簡単に低めに投げられるかと問われれば、簡単ではないことをお伝えしておきたい。
たとえボール1個分でも、しっかり制球して低く投げるためには、しっかりしたフォームを固めないといけない。リリースポイントだけで低くという簡単な話ではない。それこそ、体のバランスの問題になり、踏み出す左足の歩幅の調整も絡んでくる。下半身のちょっとした変化は、もちろん上半身にも影響する。
だから、低めに強い真っすぐを投げる投手は首脳陣から重宝されるのだ。高めに強いボールで空振りを奪う、これも投手としてのひとつの醍醐味(だいごみ)だろう。
ただ、高めは打者がもっともスムーズにバットが出る高さであり、少しでもコースが甘くなる、あるいは体が開いてボールが見やすくなれば、長打を浴びるリスクが飛躍的に高くなる。
今の篠崎には、持ち味のボールの強さを大切に、かつ、日ごろから少しずつ低めを意識して、ブルペンから低く低くと投げて、感触をつかんでほしい。一気に何かを変えると、全体が崩れてしまうこともある。ある程度、長いスパンで取り組むことを考えてほしい。
見た目、篠崎のフォームからは、それほど全力投球という印象は受けなかった。身長が高いだけに、そこまで力を込めなくても力感、圧力を打者に与える。これもひとつの強みだろう。
1軍は開幕から勢いに乗れずに苦しむ。ファンもやきもきしているはずだ。篠崎がその救世主に。そんな大きなことは言わない。
ただ、こんな魅力ある投手がファームで虎視眈々(こしたんたん)と1軍昇格を狙っていることは、多くのファンの皆さんに知ってもらいたい。(日刊スポーツ評論家)





