7連打の集中攻撃で2回に一挙5点を奪い、投げてはエースと呼びたい風情を感じさせる青柳晃洋の好投で連敗を止めた阪神。

DeNAに今季初の同一カード3連敗を喫して不穏な気配を感じていただけに、まずはホッとひと息だろう。

でも「よかった、よかった」だけではない。大山悠輔内野手(26)である。開幕から出場した試合ですべて4番を担ってきた男がこの日は「6番三塁」でのスタメン。いろいろな気持ちはあるだろうがシンプルに「悔しい」だろう。4番打者そのものにこだわりはないかもしれないが不調で下げられたのは間違いないのだから。

ここで意地の固め打ちなどとなれば、自他ともに「よっしゃ!」となるところだろうが人生は厳しい。青柳が安打を放ったので、先発では中野拓夢と2人だけ無安打という結果に終わった。特に2回は大山の二ゴロで始まり、大山の右飛で終わり、1人で2死となった。

この日は阪神、ヤクルトなどで指揮を執った知将・野村監督の追悼試合。そこで思った。野村がいま阪神監督だったら、苦しむ大山になんと言うだろうか。

「野村監督に出会っていなければ3割打つとか20年(選手を)やるとか、監督をやることもなかった」。指揮官・矢野燿大は勝利インタビューで言った。野村が阪神監督に就任した99年2月の安芸キャンプ。そこで最初に言われたことが矢野の野球人生に大きな影響を与えている。

「高橋由伸みたいな天才は技術的な能力で3割打てるわ。お前らはそれなら2割5分や。その差を埋めるには頭を使うしかない。ヤマを張って見逃し三振してもしょうがない」

矢野はこの言葉で打席で捕手と駆け引きする重要性を改めて認識。その年、移籍後初のシーズン3割超え(3割4厘)を果たしている。そして大山の打率はこの日で2割5分2厘となった。くしくも野村の言う数字に落ち着いた感がある。

大山は真面目な性格なのだろう。ヒーロー・インタビューでも例えば青柳が当意即妙に質問に応じるのに比べ、何を聞かれても自分が言おうと決めていることを口にするようなところが見受けられる。

真面目で一生懸命な姿勢は歓迎だ。それでも「ここは一発ヤマを張ってやれ!」という部分がもっとあってもいい気はする。野村ならまず、そう強調するはずだ。もちろん矢野も伝えているとは思うけれど。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)