異常気象が影響しているのか。“恒例のシーン”はなかった。新しく指揮官に就いた人物は、グラウンドコートを脱ぎ、背番号を披露する。「ミスター・プロ野球」長嶋茂雄のそのシーンを覚えている人もいるだろう。だが藤川球児にそれはなかった。

この日から秋季練習がスタートした甲子園。激闘のシーズンを終え、つかの間の休息をとったナインたちが甲子園に再集結した。その間に指揮を執る人物は岡田彰布から球児に代わっている。背番号は現役時代と同じ「22」。タテジマのそのユニホームをまとい、彼は甲子園に登場した。

暖かい気候だからか余計な演出はいらないと思ったのか。彼は最初からその姿で登場した。その動き、話した内容などは虎番記者たちの原稿でじっくり読んでいただきたい。

ここで面白いな、というか「さすが」と感心したことを触れてみたい。ある記者が「この日を選んだのは背番号にちなんだからですか?」と聞いた。この日とは言うまでもない「22日」のことだ。もちろん日程、スケジュールによる偶然と知りながら聞くのだが球児が笑いながら、こんなことを言った。

「そうですか! じゃあ明日は23番ですかね。永久欠番ですけど。でもそうやって楽しんでもらえたらいいかな、思います。確かに(22日ですね)確かに」

阪神タイガースの永久欠番は3つ。まずは藤村富美男、初代ミスタータイガースの「10番」である。さらに「11番」。これは若い人でも知っているかもしれない、村山実だ。そして、結構、マニアック? なのかもしれないのが「23番」かもしれない。

そう「ムッシュ」こと吉田義男(日刊スポーツ客員評論家)、その人だ。3人の中で唯一、健在の吉田は91歳になった今季も甲子園に姿を見せている。

ここで思うのは、所属チームの永久欠番を知っている選手というのはどのぐらいいるのか、ということだ。まあまあの年齢になっても知らないケースも多いと思う。もちろん球児はフロントの仕事もしていたし、知っていて当然とは思うが記者とのやりとりですぐにそんなことが出てくるあたり「阪神愛」を感じるし、回転の速さも印象づける。

静かにスタートした新体制。さあ、来年の今頃は熱い戦いができているか。それとも。まずは、じっくりとした船出である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)