雨中の死闘というべきか、試合前から甲子園に降り続く雨の中で接戦を繰り広げた末、阪神は破れた。振り返ればビーズリーにしても工藤泰成にしても四球が痛かったとは思うが、それも勝負の中では仕方のないことだろう。得意の巨人戦とはいえ、勝ち続けることはできない。最後まで試合のできたことをよしととらえて、切り替えて、次に臨むしかないのである。

そんな試合前の練習中、森下翔太と巨人の浅野翔吾がバットを手にしながら話す光景があった。どうも森下がバットをプレゼントしたようである。最近のプロ野球は敵、味方関係なく交流するのは普通だ。闘将・星野仙一なら「これから戦う相手と何しとるんや!」と言うかもしれないが、これも時代の流れだろう。

言うまでもなくこの2人は同じ22年のドラフト1位同士だが、それだけではない。浅野に関しては阪神も1位指名し「TG決戦」のクジ引きの末、巨人にさらわれているのは虎党なら周知の事実だろう。森下はいわゆる“外れ1位”だ。

その森下が今季、巨人戦で暴れまくっているのは、なんとも因縁である。ルーキーだった23年にいきなり阪神は日本一になっているし、森下はここまで恵まれた野球人生を送っているように見える。

対して浅野は3軍も経験して、下積みの苦労もしているようだ。大卒、高卒の違いで浅野が4歳年下ということで無理もないだろうが、ここまでは好対照かもしれない。

その浅野に試合前、声をかけてみた。「森下とは同じドラフトの1位同士だしね」と。すると浅野は笑みを浮かべながらも謙虚な様子でこんなことを言ったのである。「いえいえ。全然、レベルが違いますから」。暴れる森下の活躍を見ながら「いつかはオレも…」と思っているのか。

そんなことを妄想していたら、試合の先制打は浅野が放った。どうも森下のバットを使ったようである。「敵に塩を送った」形にはなったが、阪神選手が相手にもらったバットで活躍することもあるわけだし、ここは細かいことは言わずにおこう。

いずれにしても森下と浅野の勝負もまだ始まったばかりと言えなくもない。延々と続く「伝統の一戦」で、ともに名勝負を繰り広げるメンバーになればいいなと思ったりする。もちろん、まだ阪神に貯金があるからこそ言えるのだが-。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 試合前、巨人浅野(左)と話す阪神森下(撮影・上山淳一)
阪神対巨人 試合前、巨人浅野(左)と話す阪神森下(撮影・上山淳一)
阪神対巨人 試合前、巨人浅野(左)とタッチをかわす阪神森下(撮影・上山淳一)
阪神対巨人 試合前、巨人浅野(左)とタッチをかわす阪神森下(撮影・上山淳一)