前夜祭恒例のアーチ合戦に、「真打ち登場」となるでしょうか。

エンゼルス大谷翔平投手(28)が22日(日本時間23日)、オールスターのファン投票で全ポジションを通じてア・リーグ最多得票を集め、3年連続で先発出場を決めました。日本人選手のリーグトップ得票は、2003年イチロー(マリナーズ)以来2人目です。

初出場の2021年は特例により、「1番投手兼指名打者」で出場。打席では無安打も、先発マウンドでは1回無失点で勝利投手に。昨年は、公式戦ではまだ無安打のカーショー(ドジャース)から球宴初安打を放ちました。そして今年は、どんな「ショータイム」を見せてくれるでしょうか? 気になるのは、オールスター前日の7月10日(同11日)に開催されるホームランダービー(本塁打競争)へ、2年ぶりの参戦があるかです。

前回は日本人で初めてホームランダービーに出場し、1回戦敗退もソト(ナショナルズ、現パドレス)と再延長までもつれる名勝負を演じました。大谷の出場で全米中が沸き、日本のファンもテレビにくぎ付けとなって熱狂したと思います。本場のホームランダービーはそれだけで球場が満員になるほど人気があり、1試合分ぐらいの時間を要する一大イベント。大谷は2年前と同様に、両リーグで本塁打トップに立つ今季最強の「アーチスト」だけに、出場打診は確実な情勢です。

しかし、昨年に続いて今年も出場はないと思います。理由は明確です。ホームランダービーは想像以上に体力を消耗し、狙い過ぎて打撃フォームも崩し、後半戦はスランプに陥る傾向があるからです。21年の大谷も前半戦だけで33本塁打と独走しながら、後半戦はわずか13本と失速。日本人初のホームラン王を逃しました。

そのため、最近はホームランダービーに複数回出る中堅やベテランをあまり見なくなりました。アーロン・ジャッジ外野手(31=ヤンキース)は17年に驚異の新人として騒がれ、前半戦だけで30本塁打。ホームランダービーでも優勝しましたが、それがきっかけで肩を負傷。後半戦は22本塁打と成績を落とし、翌年オフに手術しました。昨年も前半戦に33本塁打と記録的なペースで量産し、全米中のファンが2度目の出場を期待する声にも、「いいえ、出る必要はない。過去に1度出ているし、それで十分だ」と実現しませんでした。19年と21年に優勝したピート・アロンソ内野手(28=メッツ)のように、ホームラン王などの実績者が再出場するのは極めて異例です。

実績ある選手に代わって、今回はマリナーズのフリオ・ロドリゲス外野手(22)がいち早く、ホームランダービーへの2年連続出場を表明。開催球団の若手人気スターですが、2年連続でオールスターに選出される可能性は低いこともあり、昨年の準優勝から初優勝に挑みます。このように、今では若い選手が脚光を浴びる舞台に変わってきています。

昨年のジャッジと同じく、大谷もア・リーグで本塁打王争いを独走中。また、ジャッジと同じくオフにFA権取得という意味でも、大事なシーズンです。

さらに、今年こそプレーオフ進出を目指すエンゼルスのチーム事情もあるでしょう。フィル・ネビン監督は大谷を開幕から主に中5日で先発させるなど、例年以上に投打の二刀流としてフル回転させています。そのため、オールスター期間中はできるだけ休ませたいはずです。

また、チーム状況によっては、前半戦最後の7月8日敵地ドジャース戦に、中4日で先発登板させることも考えられます。そして、後半戦開幕となる同14日の本拠地アストロズ戦に、理想的な中5日で先発させることも可能になります。それぐらい、シーズンの行方を握る大事な2試合だからです。

ペナントを優先するなら、同11日(同12日)オールスター戦での登板はもちろん、前日のホームランダービー出場も回避が無難になります。昨年と同じく、本番のDH出場だけに限定したいはずです。

それでも、ホームランダービーで大谷が見たいという待望論も、無視できないでしょう。

今回オールスターの舞台となるシアトルのT-モバイルパークは、大谷にとっても思い出深い球場の1つでしょう。過去に同球場では31試合で通算6本塁打。一番印象に残っているのは、21年7月9日に同球場史上6人目のアッパーデッキ(最上階席)へ飛び込む特大141メートルのホームランです。シーズン最終戦となった同10月3日には、有終の美を飾る46号の初回先頭弾も打っています。

さらに今年は、開催都市シアトルに本拠を置くマリナーズの球団史上最大のスター、ケン・グリフィー・ジュニア氏とイチロー氏の功績をたたえるオールスター戦でもあります。偉大な先人であるイチロー氏に花を添えるためにも、同氏が「世界一の選手にならなきゃいけない」と言う大谷には、ホームランダービーで両手にトロフィーを掲げる姿を1度は見たいものです。そして、オールスター戦では日本人選手として07年のイチロー氏に次ぐ史上2人目のホームランで、WBCに続く今年2度目のMVPにも期待は膨らみます。(大リーグ研究家・福島良一)

マリナーズ戦の試合前、イチロー氏(右)にあいさつするエンゼルス大谷翔平(2023年4月3日撮影)
マリナーズ戦の試合前、イチロー氏(右)にあいさつするエンゼルス大谷翔平(2023年4月3日撮影)