プロ野球の快記録や珍記録を振り返る「データで見る19年」を連載します。最終回の第13回は日本人大リーガーを取り上げます。

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19年の日本人大リーガーで、異次元の数字を残したのはダルビッシュ有(33=カブス)の後半戦(球宴後)だった。与四球が前半戦49→後半戦7と激減。後半戦は打者312人に対し7個だから、約45人に1個のペースに良化した。

後半戦の1試合(9イニング)平均与四球はわずか0・77個。ブレーブスなどで通算355勝を挙げ、抜群の制球力が「精密機械」と呼ばれたグレグ・マダックスのシーズンベスト記録(97年の0・77)に匹敵するような少なさだった。

7月23日からは打者142人連続無四球。同30日カージナルス戦から8月21日ジャイアンツ戦まで、先発5試合連続で無四球&8奪三振以上は1893年以降の大リーグで初の快挙だ。後半戦の三振と四球の比率(三振÷四球)は16・86にもなる。四球1個を与える間に約17奪三振のペース。後半80イニング以上投げた36投手の中では、2位バーランダー(アストロズ=9・80)に大差をつけるトップだった。

9月17日レッズ戦では日本人初、球団新となる8者連続奪三振。70年シーバー(メッツ)の大リーグ記録(10者連続)に迫った。シーズン最後は3試合連続12奪三振以上と最高の締め方。「絶望感もあった」と振り返る前半戦から一転、最後は「間違いなく今までの人生で段違いのレベルにいる」と断言するに至った。

大変身した要因だが、本人がYouTubeチャンネルで語ったところによると、背骨のコンディショニングを重視しフィジカルが安定。練習と試合で投球フォームを交互に使い分け、常に脳を刺激する試みが功を奏したという。一切走らない調整法も導入した。シーズン途中から「やりたいことが何でもできる状態」になり、自在の制球に自信を深めた。

開幕から好感触で臨める来季は、狙いたい記録がある。先発投手の三振と四球の比率は、近代メジャーの1900年以降、2014年ヒューズ(ツインズ)の11・63が最高(三振186、四球16)。2桁に乗せるだけでも過去3人しかいない。レンジャーズ時代の13年、サイ・ヤング賞の得票でシャーザー(タイガース)に次ぎア・リーグ2位の実績がある。勝ち星が伴えば、日本人初となるサイ・ヤング賞のチャンスもありそうだ。【織田健途】(おわり)