【シアトル(米ワシントン州)11日(日本時間12日)=四竈衛】メジャー球宴の舞台で、異例の光景が広がった。ア・リーグの「2番DH」で出場したエンゼルス大谷翔平投手(29)が、同地区のライバル球団のファンからラブコールを受けた。1打数無安打と、初アーチはお預けとなったが、打席のたびに「Come to Seattle」の大合唱が起こるなど、あらためて人気度の高さを実証した。後半戦は、14日(同15日)のアストロズ戦で先発登板でスタートする。

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お祭りの舞台とはいえ、会場は同地区で火花を散らす宿敵マリナーズの本拠地Tモバイルパーク。だが、ファンの思いは違った。1回の第1打席。大谷が打席に立つと、本来は「アウェー」のスタンドから「Come to Seattle(シアトルへ来て)」の声がわき起こった。

今オフ、FAとなる大谷に向けられた、異例とも言えるファンからの大合唱。長い歴史を持つ球宴は今年で93回目。これまで強烈なブーイングはあっても、おそらく起こったことのないラブコールだった。大谷は「ちょっと複雑な気持ちでしたけど、打席は打席で集中したいなっていう、どんどん振っていきたいなっていう感じでした」と振り返った。

前日の会見でも、報道陣から今オフに関する質問が相次いだ。球団選択の基準について「全く考えていないので、今の段階で言えることは本当にない」と話し、「まずは自分ができることをしっかりやる」と、残りシーズンに集中する姿勢を繰り返した。それがこの日は、敵地ファンからの「愛のメッセージ」。驚きはあっても、嫌な気分ではなかったに違いない。「いつも来た時にすばらしいファンだなと思ってますし、ここ2年ぐらいはシーズン終わってシアトルに来たりしてたので、街もきれいですし、すばらしいところかなと思っています」。オフには、同地のトレーニング施設を利用するなど、少なくとも悪い印象はない。

大谷にすれば、今は今季のエンゼルスで公式戦を全うすることに集中するしかない。14日には、後半戦の「開幕投手」として再始動する。「自分がやることは変わらない。毎試合ベストの状態で結果を出すこと。チーム的にはちょっと苦しい状態ですけど、ケガ人も帰って来ますし、その時にしっかり戦えるように、今のうちから準備して、後半戦に臨んでいけたらと思います」。今後は、他の遠征地でも「ラブコール」が起こる可能性も捨てきれない。あらためて大谷の全米人気が証明されただけでなく、早くも今オフの争奪戦が注目され始めていることが浮き彫りとなった。

○…初回、フリーマンとベッツのドジャースコンビは、マイクとイヤホンを着けて守備に就いた。大谷への「Come to Seattle」の大合唱が起こると、アナウンサーは「君も呼びかけたいか」と質問。一塁を守るフリーマンは「タンパリングになっちゃうよ。僕は(コールを)しないが、30球団がショウヘイをほしがるはずだ」と笑っていた。

○…MVPは8回に逆転2ランを放ったナ・リーグのE・ディアス(ロッキーズ)が初出場で選ばれた。代打でバティスタのスプリットを左翼へ運んだ。ロ軍初の受賞で、捕手では10年マキャン以来6人目。「特別な瞬間になった。いろいろな感情が込み上げてきた。母は多くの犠牲を払って僕を支えてくれていた」と涙を浮かべた。2回にはY・ディアス(レイズ)が先制弾で、同姓選手のアーチ競演は初。