【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)14日(日本時間15日)】ドジャース山本由伸投手(27)が、白星はつかなかったが、エースたる貫禄の投球で勝利に貢献した。メッツ戦に先発し、7回2/3を4安打1失点。初回、先頭リンドアに本塁打を浴びたが、その後は20打者連続アウトを奪うなど、過去最多42球を投じたスプリットを軸に圧倒した。3月上旬にWBCで開幕投手を務め、シーズンでは開幕から4試合連続QS(クオリティースタート=6回以上を投げ自責点3以下)。安定感抜群の投球を続けられるわけとは-。オリックス時代の同僚で日刊スポーツ特任記者の鈴木優氏が「Yu's Eye」で秘話をリポートする。
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登板4日前、由伸はルーティンワークの一環でキャッチボールを行っていた。いつもと変わらない、何げない練習風景。だが、腕を振ってボールを投げた先に、意味があった。このときの相手は昨季途中からコンディショニングを担当している青田佑介トレーナーで、本格的なキャッチャーミットを使用。オリックス時代に若月健矢捕手からプレゼントされたものだった。
今や、ワールドシリーズ3連覇を目指すドジャースの絶対的エースの由伸。常勝軍団の一体感を「ファミリーな感じに近いというか、そういった雰囲気がすごくいい」と表現する。その感覚は、遠く離れた古巣に対しても変わらない。「オリックスの試合結果は気にしていますし、チームメートというよりも家族みたいな感覚です」。気持ちは離れていない。そのつながりが、あのミットをめがけて練習に励む姿にも表れていたように見えた。
今季はWBCに出場後、その影響や負担を心配する声もあった。だが、開幕戦後には「ポストシーズンみたいな一発勝負の試合ほど緊張せず、適度な緊張感で入れたので良かったです。もちろん負けていい試合はないんですけど、それでもシーズンは長い。その中の1試合として必要以上に力まず、冷静に投げられました」と語っていた。むしろ一戦必勝のあの時の経験が、開幕からの絶好スタートにつながった。
その一助となったのが、オリックスの元同僚・若月捕手でもあった。大会前、「若月さんとバッテリーを組めることは、一番と言ってもいいくらい楽しみにしてますよ」と話していた。世界一を目指す大会で強く心待ちにしていたことの1つが、かつて何度も一緒に戦った捕手と再びバッテリーを組むこと。周囲から愛される、人なつっこい人柄も、ずっと変わらない。
WBC限定で由伸-若月の黄金バッテリーが復活した。若月捕手が「もう、組むことはないと思ってた」と語ったのも自然な本音だろう。だが、夢はまだ続いている。「由伸が日本に最後帰ってくるまでは現役を続けたい」。10年以上先になるかもしれない。その時まで自分もグラウンドに立っていたい-。その思いが、練習相手の“若月ミット”に託されている。
常勝軍団の一員として由伸が前進し続けることは、周囲の推進力にもなっている。この日の登板後、「今年の中で一番いい感覚で投げられたと思いますし、また来週もこういうコメントができるように練習を頑張りたい」と意欲を示した。サイ・ヤング賞の筆頭候補とされ、メジャー屈指の右腕として地位を確立しても、人間性と謙虚さは普遍。それが、安定した投球を続ける由伸の強さと言える。
◆鈴木優(すずき・ゆう)1997年(平9)2月5日生まれ、東京都出身。雪谷高から14年ドラフト9位でオリックス入団。20年7月1日の西武戦で、都立高から直接プロ入りした選手としては史上初のプロ初勝利を挙げた。21年に巨人と育成契約を結んだが、シーズンオフに戦力外通告を受け、現役引退。通算成績は1勝3敗1セーブ。23年に米国ロサンゼルスに留学。24年からドジャースの番記者として幅広く活動し、テレビ局のリポーターも務める。現役時代は右投げ右打ち。181センチ、83キロ。



