巨人高木勇人投手(25)が「世紀の勝利」を飾った。阪神との8回戦に先発し、6回を3失点。得点圏のロープ際まで追い込まれても粘り、KOの1本を許さなかった。巨人投手のデビュー5連勝は、堀内恒夫以来49年ぶりの快挙。パッキャオとの「世紀の一戦」を制したボクシング・ウエルター級王者のメイウェザーは48戦48勝。巨人の無敗男も追随する。
ラスベガスでメイウェザーが伝説となった直後だった。巨人の無敗男・高木勇が軽やかに、一塁コーナーから現れた。歴史的勝利を見届けようと、戦いの聖地には今季最多、4万6587人が詰めかけた。ゴング直前、キャッチボール初球。重い右ストレートがミットを「パーン」とたたく。軽いどよめきが起こった。
若きハードパンチャーは、キャッチボールを「肩を温める手段」とは考えていない。スパーリングから本番を想定、いつも全力で放り込む。高いテンションを保って阪神との決闘に入った。「我慢して最少失点が僕本来のスタイル」。決定打を許さない6回3失点。あのビッグネーム、堀内恒夫に肩を並べた。
勝てる根拠がある。制球という防御力を軸とし、我慢し、要所でコーナーに強く打ち分ける。その根拠がメイウェザーと重なる。
左打者の被打率が2割3分9厘。右打者が1割2分2厘-。同じジムの同姓・高木京が「彼にはシュートがある。『高木ボール』がクローズアップされるけど、右バッターはシュートが嫌なのでは」と読む。被安打6のうち右打者はゴメス1本だけ。右同士で拳を交わせば負けない。だから打線を寸断でき、粘れる。
鋭利なスライダー軌道の「高木ボール」がフック。懐に飛び込むシュートがアッパー。自慢のコンビネーションが浪速の強打者・マートンに効いた。2点目を失った直後の3回2死二、三塁。シュートでえぐり、どん詰まりの投ゴロ。3点目を失った直後の5回2死一、三塁。首を振って高木ボールを放った。「1点もやらない、と思った。一番打たれる確率が低いボールを選択した」。3回を伏線とした心理戦を制した。
ラウンドごとにリングシューズのヒモがほどけた。「ほどけたから結ぶ」と冷静に間合いを保った。本人は「ピンと来ない」記録を、原ジム会長の原監督は「さん然と輝く」と絶賛。負けない理由を「非常に強い。いつも1戦目の気持ちでいる。今日も同じ。おごり、高ぶりがない。本人流の強さがある」と見た。ファイトマネー1200万円の武者が、腕1本でのし上がっていく。胸すく筋書きが続く。【宮下敬至】
▼高木勇が無傷の5連勝。開幕から5連勝以上の新人は12年十亀(西武=6連勝)以来で、巨人の投手では42年藤本英(10連勝)60年青木(5連勝)61年村瀬(5連勝)66年堀内(13連勝)に次ぎ5人目。堀内は5連勝目がリリーフだった。先発だけで5連勝はドラフト制後(66年以降)初めてで、2リーグ制後(50年以降)は53年小山(阪神)61年村瀬(巨人)に並ぶ最長となった。



