巨人が「土壇場力」でDeNAをうっちゃった。“屈辱のスミ1負け”まであと1人の9回2死、亀井善行外野手(32)が同点の適時打。延長戦に持ち込んだ。11回は鈴木尚広外野手(37)が盗塁-相手の暴投-内野ゴロでの突入で、一塁から決勝ホームまでたどり着いた。相手の勢いを徳俵で受け止め、連敗も4で止めた。
広大な越後平野にそびえるハードオフ新潟を、鈴木がノビノビと駆け抜けた。延長11回1死。ゲッツー崩れで一塁に残っていた。打者小林に1球投げ終えたその時、DeNA中畑監督が出てきた。日本球界最高峰の韋駄天(いだてん)を恐れて妙手を打つと、ミクロの攻防が始まった。
捕手を強肩の黒羽根に交代した。「勝負してきた。こちらも初球から勝負だ」。ベンチワークを塁上で一目すると、土壇場の独壇場が幕を開けた。2球目。スタートの瞬間にセーフと分かる盗塁。足を緩めない。3球目。黒羽根が前にはじいたその瞬間を見逃さない。「いい反応ができた。転がった瞬間、いけると思った」。ボールを握った時点でもう、三塁のアンツーカー付近にいる。あっという間にリーチをかけた。
4球目。小林が放った平凡な遊ゴロを「いい打球を打ってくれた。いける」と思えた。無安打で、たった3球で、DeNAを奈落の底へ突き落とした。
同点の呼び水も、このスペシャリストだった。“スミ1負け”寸前の9回無死一塁。代走で2球目に盗塁し、亀井の適時打を演出した。「とにかく積極的に自分を信じて。準備の結果」と涼やかに言って、強調したのは「監督から『思いきっていけ』と言われていたので」だった。
背中を押した原監督も「よく、この…。2点取った。どう動かしても、2点が最高の点。足が生きた」と、衰えるどころか進化する37歳に驚いた。ただすぐに「いつでも、新しい明日が来る。そうそう毎日(気持ちは)変わらない」と静かに、延長11回のうっちゃりにしては不気味なほど静かに振り返った。
新潟に向かう新幹線を待つ朝だった。前夜は4点差をひっくり返された。「DeNAは元気いっぱいで移動しただろうな」と言ってから「でも」と続けた。
原監督 あの展開は、1年でそうあるものじゃない。元気って、1年間ずっと続けることが、本当に難しいんだ。
鈴木、亀井。沢村に山口。一緒に修羅場をくぐり抜けてきた男たちが、原監督の持論である「徳俵で本当の力は出る」を実践した。勢いには本物の強さで対抗する。DeNAの抜け出しなど許さない。【宮下敬至】
▼鈴木が9回に同点、11回に勝ち越しのホームを踏んで巨人が逆転勝ち。今季、延長戦の勝利は4月7日広島戦、同19日阪神戦に次いで3度目だが、前回も代走鈴木が9回に同点のホームを踏んで勝っている。今季の鈴木は盗塁を4度試みてすべて成功。DeNA戦の盗塁死は12年9月2日(本盗失敗)が最後で、同年9月28日から9連続で盗塁を成功させている。



