日本ハムが総力でルーキーにプロ初勝利をプレゼントした。3点を追う6回1死二塁でハーミッダが1点差とする左翼線の適時二塁打。続くレアードが左翼スタンドへ逆転の6号2ランを放った。3連打で敗色ムードが漂っていた試合を一気にひっくり返した。7回以降はリリーフ陣を次々とつぎ込む栗山英樹監督(54)の積極采配が実り、逃げ切った。チームは連勝で首位西武とのゲーム差を1に縮めた。
降板は決めていた。2点を追う6回。栗山監督は、有原航平投手(22)の「ホロ苦い」デビューを覚悟した。そのときだ。中田とハーミッダの打球が左翼線を破ると、レアードの大飛球は左翼スタンドに消えた。5回までわずか1安打の打線が、たった13球で逆転した。「(有原の持つ強運が)何かあるよね。有原を勝たせたいという思いが感じられた。そういうことでチームは前に進む。力ではなく、心のつながりで勝つしかない」。人知れず、練習着を新調して臨んだ“特別な一戦”。結果が、ただただ、うれしかった。
禁物は、焦りだった。スポーツキャスターとして、広陵高時代の有原を自身の目で見ている。「今まで見た高校生の投手の中で3本の指に入る」。高い実力は、数年前から知っている。右肘痛の再発だけが怖かった。この言葉には、衝撃的な裏もある。3本の指の中に、実は大谷翔平は含まれていない。開幕6連勝を飾り、球界を代表する投手になりつつある大谷よりも、当時は秘めている力を感じていた。だから「トレーナーやドクター、いろいろな人が支えてくれた。感謝しています」。無事にマウンドに立てたことを、まず素直に喜んだ。
7回、谷元が四球などで2死満塁のピンチを背負うと、すかさず鍵谷を投入した。8回2死一塁、左腕・宮西に対して竹原を代打に送られると、迷いなく守護神・増井をつぎ込んだ。「信頼していってもらっている」。どちらも、三振で窮地を脱した。攻めのタクトに、盤石の救援陣の力が呼応した。
球界に新星が誕生する6時間ほど前のことだ。まだ誰もいないスタンドを見つめながら、栗山監督は言った。「歴史の証人に、ぜひなってください」。この日詰めかけた2万7561人は、価値ある一戦を見届けた。この夜のことは、きっと数年後には自慢話になる。【本間翼】



