快挙に彩られたプロ初完封だ。阪神藤浪晋太郎投手(21)が、巨人相手に力投して3勝目。2安打10奪三振の力投。プロ3年目で本拠地甲子園で初の巨人戦勝利をマークした。宿敵相手に1-0完封の上、毎回奪三振もマーク。チームの連敗を3で止め、最下位脱出の白星を運んできた。

 全身を殴りつける雨が心地よい。プロ初完封。藤浪は笑って右拳を握った。

 「正直、自分自身ちょっとしびれました。9回もマウンドに上がる気、満々でした。この1点で勝つんだ、という気持ちでした」

 最速155キロの直球が重い。強い直球が変化球を生かす。137球で10奪三振。許した安打は4回の単打2本だけ。甲子園で初めて巨人から白星を奪った。

 「う~ん…、やっぱり優勝が決まった試合ですね」

 伝統の一戦。昨季はCSファイナルステージで快投星も手にした。それでもまだ、最も記憶に残る試合はメモリアルゲームだという。05年9月29日の甲子園。左翼金本がウイニングボールをつかんで両手を突き上げ、岡田阪神がV奪回を成し遂げた一戦だ。

 「偶然、家族で甲子園まで見に行ってましたから」

 当時、小学5年生の藤浪少年は巨人ファン。真っ黄色に染まった一塁側内野席に身を潜ませた。「巨人の応援はできないし、ハッピを着ることもなく淡々と見てました」と苦笑い。赤い糸で結ばれていたのだろう。怒号のような大歓声に圧倒された少年は10年後、思い出の甲子園巨人戦で大歓声を生み出す側に回った。

 「おいっ、晋太郎! これ誰のせいや?」

 1月、東京で広島前田らと合同自主トレに励んだ。ある時、キャッチボール相手の広島大瀬良に笑顔で“叱られた”。差し出された左手を見ると、人さし指の外側が青く腫れていた。

 「本当にボールが強い。グラブの手が腫れたのは1年前、マエケンさんのボールを受けた時以来ですよ」

 大瀬良の証言が底知れぬポテンシャルを裏付ける。この日も直球で井端、亀井のバットをへし折り、自身のレギュラーシーズン巨人戦連敗も5で止めた。

 「勝つためにいい仕事ができて良かったです」

 チームの連敗を3で止めたことが大きい。4月には足踏みしたが、やはり藤浪は藤浪だ。新たな歴史をつくる男だ。【佐井陽介】

 ▼藤浪がプロ初完封を初の毎回奪三振でマークした。巨人相手に毎回奪三振は95年6月3日のチェコ(広島)以来、20年ぶり8人目。阪神では59年村山、81年江本に次いで3人目になる。毎回奪三振でスコア1-0完封は05年上原(巨人)が6月30日ヤクルト戦でマークして以来で、こちらも8人目(9度目)。阪神では68、70年に記録した江夏以来2人目で、このカードでは初。