阪神和田監督の勝負手が決まった。1点リードの6回、2死一、二塁。まだ86球で余力のあった能見の代打に狩野恵輔外野手(32)をコール。関本が故障離脱する中、命運を託された切り札・狩野が初球を左前に運び、貴重な追加点だ。4連勝と波に乗るチームは、今日8日にもソフトバンクに並んで交流戦で首位に立つ。
両手に持つトラッキー人形が殊勲のご褒美だ。狩野は野武士のような風貌でキリリと言う。「最初に…。能見さんが(お立ち台に)立たせてくれました。本当は能見さんでしょ。気を使ってもらいました」。笑みもこぼれるが、数時間前、グラウンドでは計り知れない重圧と戦っていた…。
6回2死一塁。リードはわずか1点。藤井が四球を選んで一、二塁になると和田監督は腹をくくる。能見の打順になった。次打者席でスタンバイしていた狩野を代打で起用する、攻めの采配だ。「あの1点で3回を守りに行くよりも、もう1点取りに行った。(能見も)悪いなりに踏ん張ってくれたけど、そこまで良くはなかった。あそこは、今日は勝負に出ました」。指揮官が信頼して送り出せば、狩野も燃えに燃えた。
吉川の初球だ。内寄りカットボールをバサッと切り裂くとライナーで三遊間を破る。適時打で2点リードに広げ、救援陣も心強い。狩野は言う。「必死です。代打は甘い球が来たら、積極的に行かないといけない。藤井さんが四球になって、ストライクが来る可能性が高いところを攻めの気持ちを忘れずに行きました」。切り札の関本が左脇腹を痛めて離脱中。代役の「代打の神様」に指名され、なかなか憎い名演技ぶりだ。
体調管理には人一倍、気を配る。こだわるのが睡眠だ。10年に椎間板ヘルニアの手術を受けるなど、腰痛を抱える。転戦を乗り切るため、遠征のたびにホテル自室へマニフレックス社の特製マットレスを持ち込んでいる。「体にも優しいですから」。しかも、自宅でも用いている。米大リーグのジャイアンツ青木も愛用するアイテム。寝る環境を一定にすることで腰への負担を和らげる工夫だろう。
前日6日は剛腕大谷に勝ち、一夜明けて、接戦を制した。和田監督は「昨日取った後の今日の試合が非常に大事だと思っていた。今日取れたのは大きい。関本がいない。得点圏の大事なところで狩野が行く場面が多くなってきた。そういう場面に慣れていかないといけない」と言う。誰かが傷つけば、誰かが癒やす。狩野も「ケガ人は多いけど、チームみんなでカバーすればいい」と話す。一太刀に生きる武者に、修羅場が似合ってきた。【酒井俊作】
▼代打狩野が6回、初球を打ってダメ押しタイムリー。今季、代打で阪神最多の28度起用され、打率2割9分2厘(24打数7安打)の好成績。今季初球打ちで2打数2安打の打率10割、2球目まででは計9打数4安打の4割4分4厘と、果敢な早打ちで好結果を残している。



