崖っぷちに大きな星が輝いた。阪神が負ければ自力優勝が消滅する一戦。バレンティン復帰で脅威を増した首位ヤクルト打線を止めたのは左腕岩田稔(31)だ。8回を4安打1失点で山田、畠山、バレンティンの主軸はきっちり無安打。9月初勝利の8勝目で、うち5勝はチームの連敗を止める踏ん張り男ぶり。今日21日も藤浪で勝てば同率首位に並べる1ゲーム差に押し戻した。
無数のスポットライトが丸刈りに集まる。岩田はお立ち台でニッコリ八重歯をのぞかせた。負ければ自力Vが消滅していた一戦。超強力打線をわずか95球で8回4安打1失点に封じ込め、2連敗中の虎を土俵際で踏みとどまらせた。
「完投すべきゲームでしたけどね。移動翌日のゲームで12連戦の3戦目。先発が最後まで投げるのが理想だったけど…。チームが勝てたので良かった」
DeNAに連敗し、前夜横浜から大阪に戻った。大砲バレンティン復帰で破壊力を増したツバメ打線に「連敗ストッパー」が立ちはだかった。「逃げる気はなかった」。大胆に内角を突き、ムービングボールでバットの芯を外す。24アウトのうち、バント失敗の併殺を含めて14個がゴロアウト。駆けつけた両親がバックネット裏から見守る中、1カ月ぶりの8勝目をもぎ取った。
「投げ負けたけど!」
8月27日の夜、1枚の写真に悔しさを書き殴った。マツダスタジアムで広島前田と投げ合い、7回4安打1失点で黒星を喫した直後の夜。広島市内の居酒屋で“反省会”を開いた。煮物や刺し身で空腹を満たし、店を後にしようとした時だ。その場で現像された写真が出てくるインスタントカメラ「チェキ」を見つけ、撮影してもらった。
すぐさまペンを手に取る。「今季最高のピッチング。」と記した後、「マエケンに投げ負けたけど!」と太く書き込んだ。「結果、チームを勝たせられなかったら意味ない。この悔しさを忘れたらアカンからな」。もう投球内容を問われる時期は過ぎた。自戒を写真に込め、この1カ月間は勝利だけを追求した。
ここ6試合の登板で1勝4敗。8月21日DeNA戦の7勝目以来、岩田自身も3連敗中だった。迷惑をかけ続けた借りを返すタイミングは、ここしかなかった。横浜遠征中に梅野を食事に誘い、考えをぶつけ合ってからバッテリーを組んだ一戦。12連戦の1、2戦目で連投していた福原、安藤を休ませ、チーム連敗中の登板で5勝目だ。
「個人成績とかそんなことより、チームが勝つ方が意味は大きい」
今季のヤクルト戦に3勝1敗。優勝争いはもちろん、ポストシーズンも見据えれば、快投を印象づけた価値は大きい。今日21日の直接対決第2ラウンドは、勝てば同率首位、負ければ自力V消滅。運命の分かれ道、虎が再びVロードを歩む権利を得た。【佐井陽介】
▼阪神岩田がチームの連敗を2で止めた。8月21日DeNA戦(京セラドーム大阪)では、巨人戦3連敗(メッセンジャー、能見、藤浪が敗戦投手)後、苦しい状況を抜け出す勝利を挙げている。
▼岩田は5月に2度、藤浪、能見、メッセンジャーで3連敗の後に勝ち投手となった。また、6月にはチームの連敗を4で止めた。チームが2連敗以上で岩田が窮地を救ったのは今季5度目となった。



