何という巡り合わせだろう。四半世紀ぶりの広島美酒の日。先発マウンドに立ったのは、黒田博樹投手(41)だった。

 6回3失点の粘投で勝負強さを発揮し巨人を下しての優勝星。マウンド上でできた歓喜の輪で新井の姿を見つけると10秒ほど抱き合い、お互いの胸で泣いた。

 「最後だと思って目いっぱいいきました。(涙は)いろいろ思い出すことがあって感極まった。(広島に復帰して)よかった。25年、待ってくれたファンにお礼を言いたい」と話した。

 再び時が動き始めたのは14年オフ。メジャーでの巨額契約を断り、日本球界復帰を決断。15年2月16日の会見で語った。「06年に最初のFA権を取得した際の最終戦でファンの人たちに心を動かしてもらったので、今度は逆に自分がそのファンの人たちの気持ちを動かせれば良いかなという気持ちが一番強かった」。男気と表現される言動の背景には、いつも人を思う気持ちがある。

 7月23日阪神戦で史上2人目の日米通算200勝を達成し「今年のチームは20年やってきた中でもベストなチーム。最後はそのチームメートと優勝したい」。その右腕の姿に、どれだけの人の心が突き動かされただろう。

 この日も闘志がほとばしる場面が。4回表に逆転した直後、巨人マイコラスが安部に死球をぶつけたシーンで激怒。三塁ベンチ前でキャッチボールしていたが、マウンドに近づこうとして止められたが、その心意気はベンチの誰もが感じとっていた。

 自らのためだけでなく、ファンのため、友のために戦う男。野球の神様は、黒田だからこそ、最高の舞台を用意してくれたに違いなかった。