大きく振りかぶって右腕を振った。横浜商大・飯田琉斗投手(3年=向上)はチーム始動日となった26日、ブルペンに入り、30球。

初日から捕手を座らせた。「バランスよく投げられたとは思いますが、まだまだボールは来てません」と控えめだが、見守った井樋監督が「初日だよ。焦るなよ」とうれしそうに話すほど、順調なスタートだった。

神奈川大学リーグ通算7勝で、2年春には自己最速154キロを出した。今秋ドラフト候補に挙がるが、昨秋は絶不調に陥った。直球でストライクが入らなくなり「投げること自体、怖くなってしまった」。2試合、2回1/3のみで、自責点8。防御率は30・86に跳ね上がった。

原因は、自粛期間にあった。春先は絶好調。だが、新型コロナウイルスでリーグ戦が中止となり、チーム活動も止まった。その間も投球練習は続けたが、打者が立たない状況で実戦感覚が鈍っていった。「戻すのに半年かかりました」。

再びの緊急事態宣言。今回も、当初の10日始動がずれ込むなど、影響は出ている。だが、同じ過ちは繰り返さずに済んだ。男ばかり5人兄弟の長男。全員が野球をやっており、年末年始のオフ期間も、捕手をやっているすぐ下の高1の弟が投球を受けてくれた。中3の弟も交え、実戦に近い練習が出来た。

何より、主将の自覚が違う。昨秋の新チーム発足後、1カ月は主将が不在だった。最終的には「やらせて下さい」と自ら志願。投手が主将になるのは、井樋監督の記憶にある限り、横浜商大史上、初めてだった。始動日が延びたこの期間も、全部員に呼び掛け、毎日、昼、夜とオンラインでミーティングを開催。1人で練習するには、どう工夫すればいいか、みんなで話し合った。野球とは関係ない話題も交え、1年生も含め、全員が発言する機会を心掛けた。

狙いを、こう明かす。「選手として、自分のことに集中したい時期もあります。でも、全員で協力して、全員でレベルアップしないと、目標の日本一にはなれないので。自分よりチームが第一優先です」。自身初となるリーグ戦優勝、その先の日本一、そして秋にはドラフト指名。コロナ禍で強くなった主将の自覚と責任を携え、今年の第1歩を進めた。【古川真弥】。「ドラフト候補 会いに行きます2021」はこちら―>