ボクシングは大体2、3カ月前に試合が決まり、年間3、4試合こなす。昨年からそれもままならない。特に世界戦は大半が外国人相手だけに、渡航制限などもあってなかなか決まらない。それでも9月に日本人3人が防衛戦予定も、コロナ禍の影響を受けた。
WBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔は緊急事態宣言延長で、有観客から国内の世界戦で初の無観客に変更となった。WBC世界ライトフライ級王者寺地拳四朗は感染して延期。日本人では昨年11月のWBA世界ライトフライ級スーパーフライ級王者京口紘人以来2人目のことだった。
興行、試合も減り、マッチメークも普段以上に難しい状況が続く。そんな中で果敢に勝負に出たジムがあった。「メキシコに打って出る」と、横浜光ジムの2人が海外進出した。
3度防衛中の日本スーパーウエルター級王者松永宏信と、日本ウエルター級6位坂井祥紀。中量級は海外の層が厚く、日本人になかなかチャンスが回ってこない。そこでこちらから乗り込んで、アピールしていく戦略だ。
8月20日にプエブラで、松永は左ストレート一発で初回TKO勝ちした。坂井はメキシコで10年にデビューし、昨年里帰りして日本王座にも挑戦した。この日はメインで3度ダウンを奪って3回TKO勝ち。松永の相手は3日前に変更、坂井の相手は前日計量で体重超過し、当日にパスした。メキシコらしいアクシデントもあったが、進出第1戦をクリアした。
石井一太郎会長は名刀政宗とも言われた関光徳会長の下で東洋太平洋王者となり、海外修行の経験も豊富だった。関会長の死去後は実業家の宮川会長の下でトレーナーに。宮川会長が急死して会長代行となり、12年から正式に会長となった。
「指導者になるつもりはなかった。しかも会長なんて」と振り返るが、今や若手の敏腕プロモーターと言える。16年からプロモーション事業としてA-SIGHを設立。早くからユーチューブ・チャンネル、投げ銭などのクラウドファンディングなどに取り組み、今回の海外進出は新たな戦略だ。
興行は現地プロモーターとの共催だった。招待ではないため、経費なども自前となる。ユーチューブのメンバーシップを導入し、有料会員限定配信でリアルタイムの情報や裏話などを配信。収益のすべてはこの海外活動のための資金とするという。
海外進出では過去にも実績を持つ。赤穂亮はマニラ、高橋竜平はバンコクで地域タイトルを獲得し、世界挑戦へとつなげた。高橋は米ニューヨークにある格闘技の殿堂マジソン・スクエア・ガーデンで、日本人初の世界戦という歴史も刻んでいる。
メキシコはボクシング王国で選手も興行も多い。米国のプロモーターたちも注目している。そこで勝ち、アピールしていくことで、世界への道を切り開いていく。コロナ禍でも積極的なチャレンジが実を結ぶことを期待しよう。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)


