元幕内の幕下力士、天空海(あくあ、34=立浪)が、夏場所から弓取り式を務めている。丁寧に、力強く、初日から大役を務めた。
「本場所は全然雰囲気が違う。せり上がりを力強くやろうかなと。繊細なところ、真面目なところもあるんだぞと、示すことができました」。
弓取り式は、結びの一番の勝者に代わって、弓を振って勝者の舞を演じる儀式。原則として横綱が所属する部屋の力士が担当する。豊昇龍と同じ立浪部屋の天空海は、師匠の立浪親方(元小結旭豊)から「やるか?」と促され、二つ返事で引き受けた。春巡業8カ所で経験を積み、夏場所から本場所デビューを果たした。弓取り式の最多出場記録を持つ聡ノ富士に教えを請い、過去の弓取り式を映像で確認するなど、万全を期していた。
弓取り式を担当し、のちに関取になった力士もいるが、一般的に「出世しない」とも言われるが、天空海は「気にしないっすね」。むしろ、元幕内力士の抜てきは極めて異例だ。今場所は西幕下筆頭で、来場所以降に仮に十両に復帰しても続けるという。
「横綱が上がったおかげでやれること。横綱の代わりに土俵に立てるのは光栄なこと。横綱や親方に感謝してやりたい」と天空海。結びの一番を控えで見ることができるため「誰にもじゃまされない空間に感動しました。立ち合いの前に空気が止まるのがかっこいい」と感激していた。豊昇龍が入門した際、新序出世披露では天空海の化粧まわしを付けたことがあるなど、縁が深い。
天空海は、巡業などで相撲の禁じ手を面白おかしく紹介する初っ切りを務めたことがある。関取経験があり、初っ切りができて、弓取り式もできる。「これで(相撲)甚句もやったら完璧ですね」。実に器用な個性派が、生き生きと大相撲興行を支えている。【佐々木一郎】


