大波3兄弟の長男、若隆元(33=荒汐)が本場所に復帰した。首のヘルニアを発症し、5月の夏場所は全休。今回の名古屋場所は西三段目40枚目まで番付を落とした。まだ首は万全ではないため、荒汐親方(元幕内蒼国来)から休場を勧められたが、出場を決断した。
若隆元は、13日に放送されたNHKのドキュメンタリー番組「Dearにっぽん」で紹介されたばかり。名古屋場所2日目の一番相撲は、琴大龍を小手投げで下した。事情を知る人が多かったのかもしれない。いつもより熱量のこもった拍手が贈られた。
この日の最初の取組は相手に軍配が上がったが、物言いが付いた末に取り直し。取り直しの一番も土俵際でもつれた。それだけに「内容が良くなかった」と反省したが、覚悟を決めた出場に悔いはない。
首の手術を受ければ、長期休場を余儀なくされ、復帰まで1年以上かかる可能性がある。大幅な番付降下は免れない。慎重に判断した末、手術は回避した。痛みと付き合いつつ、相撲を変えながら戦い抜くことを決めた。
京都で症状を診てくれたトレーナーは、元幕内の炎鵬が紹介してくれたという。炎鵬も首に大けがを負い、6場所全休の末に序ノ口から再起した。同じ苦しみを知る力士の仲介に感謝し、できる限りのリハビリを積んできた。
若隆元は一時、座った姿勢でないと眠れないほど、症状はひどかったという。今も劇的に回復したわけではないが、背中の筋肉を強化するなど、土俵復帰を目指してきた。
大波3兄弟-。三男は優勝経験もある関脇若隆景(30)、次男は三役経験がある若元春(31)。3人同時関取が3人の夢でもあるが、若隆元は最高位が東幕下7枚目。周囲から「かわいそうに。お兄ちゃんを見ていると涙が出てくる」などと同情されることもあったという。
そんな時、若隆元は複雑だ。相手の立場を気遣い、その場で否定することはしない。だが、本音を言えば「そういう見方をして欲しくない」。自分はかわいそうな人ではない。「やりたいことをやっているだけなんです」。
三段目からの出直しでも、気持ちは前向き。「相撲が取れることに感謝しています」。心を整え、土俵に向き合っている。【佐々木一郎】


