関脇御嶽海(25=出羽海)が大きな壁を越えた。平幕の輝を寄り切りで下して初日から10連勝した。三役での2桁白星は10場所目にして自身初。1差で迫っていた平幕の朝乃山が星を落とし、後続を2差離して優勝争いを単独トップで引っ張る。初優勝に向けて白星を上積みすれば、秋場所(9月9日初日、東京・両国国技館)での大関とりの可能性も出てくる。

 いつも支度部屋では感情を出さない御嶽海が、この日は違った。「めっちゃうれしいですよ。ようやくだから」。短い、簡単な言葉に喜びがにじみ出た。

 立ち合いでまわしが取れなくても焦らなかった。突き合いとなったが引かず、右を差してから左を差して、一気に土俵際まで運んだ。初顔合わせの相手だったが「今までの意地もありますしね。力の差を見せつけられたと思います」と、地力の差を見せつけた。

 場所前の悔しさが力になった。7月2日に栃ノ心、3日に豪栄道、高安、栃ノ心の大関陣らが自分の部屋に出稽古に来た。2日は栃ノ心に5勝16敗。3日は大関陣らの申し合い稽古に入れず、最後に栃ノ心と2番取ったが勝てなかった。番付は1つしか違わないが、それ以上の力の差を痛感。だが、師匠の出羽海親方(元前頭小城ノ花)は「気持ち的に成長した」と、場所前の経験が好調の要因と分析した。

 大関昇進のチャンスが巡ってくるかもしれない。協会トップの八角理事長(元横綱北勝海)は「この後の星次第で来場所、大関の声も出てくるだろう。1番でも多く勝つこと」と、秋場所で大関とりになる可能性を示唆した。昇進の目安は、三役で直近3場所33勝以上。夏場所と合わせて現在19勝で、今場所さらに白星を上積みすれば可能性は十分にある。

 3横綱休場場所を、見事に単独トップで引っ張っている。今日11日目は、過去4戦4敗の平幕の魁聖。「苦手な相手だから」と漏らしたが「2桁乗ったから明日からクールダウン」と冗談を言う余裕があった。初優勝へ、運命の後半戦が始まる。【佐々木隆史】

 ◆八角理事長(元横綱北勝海)のコメント 御嶽海は自分の相撲に自信をつけている。今日でも恐れずに行っている。気持ちが強い。今場所は何か1つ、つかんだという場所にしたいだろう。高安は痛い1敗。(両大関とも)ここに来ての(御嶽海との)3差は大きい。