ケガや内臓疾患のため、4場所連続全休し大関から西序二段48枚目まで番付を落とした照ノ富士(27=伊勢ケ浜)が、全勝対決で勝ち無傷の7連勝。千秋楽の優勝決定戦の土俵で序二段優勝をかける。

西84枚目の佐田剛(20=境川)と対戦。この日のテーマは「今場所は思い切って体を使った相撲が1番もなかった。今日は思い切った体を使った相撲を取ろうと思った」。右で張って立つと、左を瞬時に差し右上手をひきつけた。体格差は歴然。それだけで相手の上体が伸び切り、左手をグイと突いただけで押し倒した。わずか3秒の取組時間で「自分の中では物足りないなというのはある」と、やや消化不良の感は残った。

それでも復帰場所で、本割7番を全勝。この時点で17番後に取る、鳥取城北高の後輩で、やはり序二段で6戦全勝だった狼雅(20=二子山)が勝つことは見越したのか「とりあえず千秋楽(の優勝決定戦)が残ってるし」と気を緩めることはなかった。何より長期的な先を見据え「優勝が目標じゃない。幕内に上がること」と目標が遠い先にあるから、手放しでは喜べない。それでも安堵(あんど)感は、報道陣と雑談する表情の端々から見て取れた。

大関経験者が幕下以下で相撲を取る前例はなかった。プライドもある。引退も頭をよぎったが、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)の「やれば出来るんだから、もう1回、復活を見せたらいいんじゃないか」という言葉が「あの言葉が一番、(心に)響いた」と土俵復帰に心を傾かせてくれた。

2年前の同じ大阪の土俵。幕内優勝争いで1差リードしながら、新横綱の稀勢の里(現荒磯親方)に本割、優勝決定戦で連敗した、あの春場所の記憶は新しい。その同じ土俵に、序二段の優勝をかけて決定戦に臨む。格差こそ歴然とした違いがあるが、復活への思いをかけて臨む。