6戦全勝同士による序ノ口の「埼玉栄高先輩後輩対決」は、東26枚目の二本柳(19=阿武松)が、元横綱大鵬の孫にあたる同27枚目の夢道鵬(18=大嶽)を寄り切りで破り、序ノ口デビュー場所で優勝を遂げた。

立ち合い当たって、ともに頭をつけ手四つの体勢で相手の出方をうかがう。しばらく土俵中央で動きが止まった後、左を入れた二本柳が右上手も引きつけ、正面土俵に寄り切った。

ともに昨年11月の九州場所が初土俵。ただ、昨春に埼玉栄高を卒業した二本柳が、まだ3年で在校中の夢道鵬の1年先輩だ。入門が遅れたのは、まだ高校3年だった一昨年7月に右膝の前十字靱帯(じんたい)を断裂したため。本来ならその年の11月に入門する予定だったが、12月に手術したため遅れた。年が明け高校を卒業した昨年3月から、阿武松部屋での生活を始め、リハビリや基礎トレーニングを経て、ようやく九州場所で前相撲を取れるまでに回復した。

後輩の夢道鵬には、在籍中に過ごした2年間で「稽古では1回負けただけ」と苦にすることはなかった。膝をケガしたことで、それまでの四つ相撲を「組んだら自分より強い人はたくさんいる。ケガをしないためにも前に出る相撲に変えた」と突き押し相撲に転換。176センチ、163キロの体を生かした押し相撲で、理想として「部屋の(兄弟子の)阿武咲関や、栄の先輩の貴景勝関」と名前を挙げた。

ケガでデビューが遅れたことで、埼玉栄高の同学年で角界入りした僚友に後れを取ることになり「早く相撲を取りたいな」と正直、焦りはあった。それも「師匠やトレーナー、ケガをした兄弟子から『焦るのが一番ダメだ』と言われて、焦りを抑えて基礎トレーニングをやって、力をつけてきた感じです」と克服した。今や角界の一大勢力になった埼玉栄高OBから、また1人、将来性豊かな力士が生まれた。