「令和のシン怪物」が昭和の大横綱の記録に並んだ。
東前頭17枚目の尊富士(24=伊勢ケ浜)が初めて挑んだ大関戦で琴ノ若を寄り切り。大横綱大鵬が新入幕の60年初場所で記録した11連勝に並んだ。両国以来110年ぶりの新入幕Vへ。快進撃が続く尊富士は、最短で13日目にも優勝が決まる。大の里が大関貴景勝を押し出してただ1人、2敗を守った。
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ちょんまげ力士の快進撃はついに、昭和の大横綱の足跡に並んだ。新大関琴ノ若との一番。体重29キロ差と体格で上回る相手に低い立ち合いから左おっつけ。右を差すとかいなを返しながら一気に出て寄り切った。大関を圧倒した勝利も「流れはよかったと思います」と興奮もなく振り返った。
大鵬が64年前に記録した新入幕の11連勝に届いた。「偉大な、すごい人の記録に並べたのは素直にうれしいです」。謙虚にいいつつ大鵬の印象を聞かれ「王鵬関のおじいちゃん」と返した。「自分は平成なんで全然。昭和の大横綱はみなさん知っていると思うので」と偉大な記録に並んだ喜びを独特の表現で示した。
ポリシーが「記録よりも記憶」。尊富士は「記録よりもまず記憶に残りたい。みなさんの記憶に残る相撲をとりたい」と言う。
それを支えるのが強力なメンタリティー。出番前の支度部屋では、兄弟子の翠富士に「いじらないと緊張するッスから」といじり倒された。最後は翠富士の「残ってやろうか」に「帰ってください」と返す度胸。「自分が集中するのは花道なんで。ここ(支度部屋)で集中しても切れてしまう。横綱(照ノ富士)から『集中は花道でするもんだろ』と教えられてますから」。短時間で集中力を極限に高められるのも才能だ。
賜杯が近づいてきた。2差で追うのも大の里1人。最短で13日目に優勝が決まるが「いや、意識しているようで全くです」と言う。
朝の稽古後に「恐怖心はないですけど、何ですかね。何とも言えないですね」と心情を語った。先場所は優勝した横綱照ノ富士に指名されて、パレードの車に乗った。「自分がいつかこの景色を見たい」と話したが、いきなりのチャンスに現実感がないのかもしれない。残り4日。幕内ルーキーが巻き起こす春の嵐も終着点が見えてきた。【実藤健一】

