返り入幕、西前頭16枚目の尊富士(25=伊勢ケ浜)が“連覇”を狙う。大相撲九州場所(11月10日初日、福岡国際センター)に向けて福岡県太宰府市内の部屋で稽古を開始。錦富士らと19番の申し合いを行った。今年春場所で110年ぶりの新入幕優勝を飾って以来の幕内復帰。一気に大関昇進を決めた同世代の大の里を励みに、最大のライバルとして立ちはだかる。秋場所を全休した横綱照ノ富士(32=伊勢ケ浜)は九州場所出場について、明言しなかった。

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黒光りする肌に汗の粒が光った。返り入幕を果たした九州場所に向けた稽古初日、尊富士は精力的に土俵に向かった。錦富士らと19番の申し合い。あっけなく土俵を割る場面もあったが表情が充実感を示した。

「何も変わることはない。15日間、相撲をとるだけでしっかりやろうというだけ。何がいいか悪いか自分で理解してる」

今年春場所、110年ぶりの新入幕優勝という快挙の代償に右足首付近を痛めて夏場所を全休した。復帰の過程で左胸付近も負傷し名古屋場所も2番とっただけで休場。しかし完全復活の先場所、西十両11枚目で13勝2敗で優勝と力を示した。今年、皆勤の3場所は幕内優勝、2度の十両優勝と優勝率100%を誇る。

けがに苦しんでいる間に同世代のライバル大の里が2度の優勝で一気に大関へ駆け上がった。「すごいですよね」と持ち上げつつ、「刺激はありますけど、誰かと競い合うより自分との闘い」と言い放った。

横綱照ノ富士から「早く三役に上がれ」とハッパをかけられているという。「横綱に言われたことをしっかりやれる力士でありたいと思う」。秋場所後、福岡入りの前に自らノルマを課した。「てっぽう1000回」。てっぽう柱をひたすら打ち続ける。「てっぽう柱がいとおしすぎて、こっちに持ってきたかったぐらい」と言うほど愛した。

それだけ体調は万全だ。課題の体重も「200キロぐらい増えました」はジョークだが、150キロ台に乗せてきた。悩みは福岡グルメを代表する「ラーメンを食べられないッス。うどんは大好物なんですけど」。摩訶(まか)不思議な魅力を放つ尊富士が、1年納めの場所で主役を狙う。【実藤健一】

◆尊富士激動の1年 昨年九州場所、西幕下筆頭で6勝1敗の好成績で十両昇進を決めた。新十両の今年初場所、東10枚目で13勝2敗の優勝。春場所、東前頭17枚目で新入幕を果たし、13勝2敗で優勝と110年ぶりの快挙を成し遂げた。しかし、その場所の終盤で右足首付近を負傷して夏場所を全休。復帰に向けた稽古で左胸付近を痛め、名古屋場所も2番とって2勝して休場した。完全復帰の先場所は西十両11枚目で13勝2敗の優勝を飾った。

○…横綱照ノ富士は九州場所出場について、言葉を濁した。九州場所担当部長の元大関魁皇の浅香山親方、大関琴桜、大の里と福岡市役所、福岡県庁を訪問。九州場所出場の可能性を聞かれた横綱は「それはノーコメント」と微妙な言葉を返した。秋場所を糖尿病と両膝の負傷で全休し、秋巡業も途中離脱を含めて土俵入りだけで相撲はとれない状況が続いた。この日も稽古場に姿はなく、稽古の開始について「その日による」と明言せず。「次の場所に出られるよう調整しています」と話したが、極めて厳しい状況は間違いなさそうだ。