女優吉永小百合(73)が21日、長野県上田市のサントミューゼ大ホールで、同市にある第2次世界大戦で亡くなった画学生の絵画を展示する美術館「無言館」の存続を訴えるチャリティー朗読コンサート「『無言館』よ、いつまでも」に出演した。

吉永は公私ともに親しく、15日に亡くなった女優樹木希林さん(享年75)と無言館のつながりについて触れた。吉永自身は10年ほど前に都内で開かれた展覧会で無言館を知ったが、実際に訪れたのは今年6月が初めてだった。吉永は「私よりももっと前に無言館に行った私の大切な人がいます。樹木希林さんです」と、目に涙をため、声を詰まらせた。

希林さんが2年前、同館で行われた成人式に出席していたことを紹介し「彼女は『私はそういうこととは関係ないのよ』という感じでしたが、映画『あん』に出演された時、ハンセン病の元患者の方々のために上映会をずいぶんやって、出掛けていました。お体の具合がそんなに良くない時でしたから、すごい人だと思います」と話した。

そして「まだその辺で見ているかもしれないので、彼女に代わってしっかりやろうと思います」と、30年以上続けている原爆詩の朗読をはじめ、平和関連活動への思いを新たにした。

無言館は、戦没画学生の絵画や遺品を集めて展示している。97年の開館当初は年間10万人が来館したが、近年は3万8000人ほどに落ち込んでいる。絵画修復や保存の難しさで、存続の危機にあることを知った吉永が、今回のコンサートを企画した。

この日は、ギタリストの村治佳織と出演、同館館主の窪島誠一郎氏による詩、原爆詩、東日本大震災で被災した人々の詩を朗読した。

吉永は希林さんと70年放送の日本テレビ系「おふくろの味」で共演したことがきっかけで、親密になった。今年2月に札幌市で行われた、北海道命名から150年目を記念したイベント「キタデミー賞」では、2人で軽妙なトークを繰り広げ、「いつでも夢を」を歌った。2人で公の場に出たのはこれが最後となった。