「れいわ新選組の山本太郎氏が記者会見するらしい」。こんな情報が流れたのは7月9日午後。ほどなく党から案内が出て、山本氏は午後7時前に国会近くの会議室で、執行部メンバーとともに会見に臨んだ。
山本氏をめぐっては、昨年10月9日に大分市内の東九州自動車道を車で走行中、制限速度時速80キロのところを69キロ超の時速149キロで走行。「速度違反自動取締装置(オービス)」に速度超過で検挙され、今年4月20日付で罰金9万円の刑事処分、同5月15日付で免許停止(90日)の処分を受けた。幹事長による厳重注意処分とした党の発表から約1週間。ようやくご本人が説明するのかと会場に向かうと、メインで語られたのは山本氏の代表辞任と政界引退表明、党名変更を含む党の「解党的出直し」と、事実上の一枚看板だった山本体制の終了だった。
病気治療に専念するとして今年1月21日に議員辞職を表明した山本氏だが、代表職にはとどまっていた。2月の衆院選の街頭演説では「身体を治し、妖怪だらけの国会に戻って鬼退治をしたい」と国政復帰に意欲的だったが、会見ではこの間の治療の結果、「数値が思わしくない状態」として、自身の健康を優先するとした。地方選挙への出馬も「ないな」と否定した。
正直、戸惑った。スピード違反をめぐる問題で、病気治療中の山本氏が公の場で対応するのはこの日が初めて。党の案内にも「スピード違反について」とあり、記者に説明を求められることは分かっていただろう。実際には、スピード違反問題を超える山本氏個人の立場と党体制の、劇的な変化というトピックも語られ、そちらにより関心が集まった。質疑応答では、スピード違反やこれも週刊誌が報じた党の秘書給与をめぐる疑惑の話題と、山本氏の政界引退、党体制に関する質問がごった煮となり、会見の「本質」が見えにくくなったように思う。
スピード違反を起こした後の昨年12月の代表選に山本氏は立候補し、3選された。大分県警への出頭は、議員辞職表明の翌日とも伝えられ、その後の週刊誌報道で一連の問題が表面化した。報道を受けても山本氏は会見などは開かず、高井崇志幹事長は、まだ処分が確定していないことを理由にしていた。当時、いずれ山本氏は説明するのか問うと、高井氏は「何らかの対応はすると聴いている」と述べていたが、その後も沈黙は続き、この日の会見は結局、免停の処分からも2カ月がたっていた。
「空気を読まない」。山本氏が自身やれいわの「持ち味」としてアピールしてきたことだ。「空気を読まない人間が国会に入れば、緊張感のない国会に緊張感が生まれないわけがない」と、党の存在意義の重要な要素として語ってきた。ただ、結果的に政治家として最後になった今回の山本氏の記者会見は、「空気を読まない」持ち味が裏目に出たように感じる。さまざまな話題をごった煮にせず、節目節目で説明した方がよかったのではないだろうか。党側は、党内手続きもあり結果的に山本氏の説明機会も遅れたと説明したが、党のトップにとって重要な局面では、現実的に空気を読んでいくことも必要だったのではないかと感じる。
2013年参院選東京選挙区で初当選した山本氏は、小沢一郎氏と組んだ「生活の党と山本太郎となかまたち」の共同代表に就任したり、衆院議員と参院議員を行き来するなど、永田町の空気とは一風異なる手法だった。れいわは、元号が「令和」に代わった2019年、4月10日に単身で旗揚げを表明。今では総理大臣も減税を「悲願」とする消費税の「廃止」を当初から掲げ、同年の参院選で躍進した。当時、街頭演説を取材するたびに聴衆が増え、「小泉劇場」とは違った、有権者の怒りを受け止める形の「山本劇場」と実感したことを覚えている。
山本氏は「空気を読まない」とは言っていたが、以前取材した自民党関係者は「突拍子のないように見えて現実的な人」と評し、「たいした策士」と話す人もいた。相手の懐に入り込み、自民党の重鎮議員とも交流があった。山本氏自身、9日の会見で「全然関係ないところから永田町に乗り込み空回りに近い状態が続いていたが、『もっとこう言えば官僚からいい答弁をもらえる』とか『この問題を絶対放置しちゃだめだ』とか、そういう応援の仕方をしてくださる心ある方(議員)はいらっしゃった。国会でさまざまなことを学ばせてもらった」と、振り返っていた。
永田町特有の押し引きも踏まえ、「一枚看板」として党を引っ張ってきたが、高市政権となり、空気は激変。れいわは今回の衆院選で、比例復活の1議席をとるのが精いっぱいだった。
そんな中で党のリセットをはかる山本氏は、新体制について「山本がいた時よりもっといいグループを」と訴えたが、一枚看板の山本氏が不在となる党の今後は不透明だ。「空中分解してしまうのではないか」と指摘する政界関係者も少なくない。
政界引退は事前に周囲に相談せず、議員として多くを学んだ小沢氏には近く報告に行くという。よくも悪くも永田町に「異風」を吹かせた山本氏の、引き際。どこか中途半端に感じられたのは、残念だった。【中山知子】





