「老化は口から始まる」というのをご存じだろうか。オーラルフレイルと呼ばれる軽微な口の衰えをそのまま放置していると、やがて全身の衰えを引き起こし、健康寿命だけでなく命さえも縮めかねないことが分かってきたのだ。
「口の機能が衰えると、軟らかいものばかり食べるようになってしまいます。それを日常的に続けていると、悪循環に陥り、口腔(こうくう)機能低下症、あるいは摂食障害につながることも懸念されます。口の衰えにはさまざまな要因がありますが、その始まりは『ささいな衰え』です。それが口だけではなく心身の機能低下にまでつながってしまい、健康寿命を縮めてしまうのです」と、オーラルフレイルから始まる“負の連鎖”に、東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長で日本老年歯科医学会の理事長も務めている平野浩彦歯科医師は警鐘を鳴らす。ちなみに、平野先生は大阪国際会議場で開催される「日本老年歯科医学会第37回学術大会」で、企画シンポジウムの座長を務める。
「実際、千葉県柏市で約2000人の高齢者市民を対象に実施された、オーラルフレイルが全身の状態に及ぼす影響・生存率との関連を調べた研究では、オーラルフレイルの方は口腔健常者と比べて、2~4年後の全身フレイル、サルコペニア、要介護認定のリスクがそれぞれ2倍以上。4年後の死亡リスクは約2倍だったことが分かっています。つまり、口の衰えが健康寿命に非常に大きく関わっていることが明らかになったわけです」
このオーラルフレイルは、トレーニングで改善することが可能だと平野先生は言う。
「そのために、誰でも簡単に続けられる体操として、『ブクブクうがい』と『ガラガラうがい』、ガムを使った『咀嚼(そしゃく)運動』の三つを推奨しています」
「ブクブクうがい」は、水を口に含み頰全体を膨らませて、5秒を目安に水を吐き出す運動。口から水がもれないように、口の機能をフル活動させるのだ。一方、「ガラガラうがい」は、水を口に含み、上を向いて5秒ほどガラガラとうがいをする運動。水がこぼれないように、複雑な動きのトレーニングができるそうだ。また、ガムをかむのも咀嚼だけでなく舌も唾液(だえき)腺も活発に動くので、ダイナミックな口のトレーニングにつながるという。
「ささいな口の衰えを年のせいにしないことが大切。人生100年時代を健康に生き抜くための口づくりを、オーラルフレイル対策を機に見つめ直していただきたいですね」
◆一般社団法人 日本老年歯科医学会 第37回学術大会
6月12~14日開催

