米マイクロソフトは17日、11月の大統領選に向け、ロシアの偽情報拡散などの工作が2カ月ほど前から活発化したとの報告書を公表した。マイクロソフトの脅威分析センターが70以上の工作主体を追跡。ウクライナをおとしめて米世論を支援反対に導き、侵攻を有利に進める意図があると分析した。

大統領選で再選を狙うバイデン大統領はウクライナ支援継続を訴えるが、対立候補となるトランプ前大統領は支援に消極的で米国第一主義への回帰を懸念する声がある。

報告書によると、ロシア大統領府が工作を推進し、情報機関や企業を使った過去の事例よりも政権中枢が直接関与する傾向が強まっている。人工知能(AI)で精巧な動画作成を試みるより、偽のニュース映像に報道機関のロゴを付けるなど単純な加工で効果を上げてきた。

内部告発者やジャーナリストをかたって偽情報の動画をネットに投稿し、数日から数週間にわたり別のサイトで取り上げられると、米国民が情報源に注意を払わず拡散させ始めた事例も確認した。

選挙戦で生成AIによる偽コンテンツが大量に流通し、混乱する事態も懸念されたが、まだ起きていない。全体を捏造(ねつぞう)したものや、見慣れた有名人の偽物はあらが目立ちやすいのが一因とみられる。電話のように個人に働きかけ、他の人が疑いを差し挟めない媒体も注意が必要だと指摘した。

中国についても、生成AIを共産党関連の工作主体が積極活用し、画像や動画を作成・改変しているのが特徴だと分析。標的とした国の分断をあおり、社会を不安定化させるのが狙いだという。(共同)