相模原市の障がい者施設「津久井やまゆり園」で、19人が殺害され、27人が重軽傷を負った事件から5カ月となった26日、手を合わせる人の絶えなかった施設前の献花台が撤去された。凄惨(せいさん)な犯行状況に加え、逮捕された植松聖容疑者(26=鑑定留置中)が元職員で、「障がい者は生きていても意味がない」などの理不尽な主張をしていることも大きく報じられた。一方、匿名となった被害者の実情は見えにくい。知的障がい者の支援現場、専門家を訪ねた。【清水優、小松正明】

 植松容疑者がなぜ、このような考えを持ち、犯行に至ったのか。神奈川県の知的障がい者支援施設で勤務経験を持つ明治学院大社会学部の深谷美枝教授(社会福祉学)は「彼が3年は仕事をしていたことを重視している。対人援助職についた人に3年ほどで現れることがある『バーンアウト(燃え尽き)』が1つの背景ではないか」とみる。

 バーンアウトは「情緒的な消耗感」、非人間的になる「脱人格化」、何の意味もないと思う「個人的達成感の欠如」の特徴がある。同容疑者の言葉に「合致するところが多い」という。

 卒業生にもバーンアウトの症状が出たことがある。「人権意識が極めて高い卒業生が、関東の指定管理の現場で経験した。彼は『自分が酸素を吸えない時、人の酸素のことまで考えられない』と言った。そこまで追い込まれた」。防ぐためには「職員が人間として利用者に向き合えるだけの待遇改善が急務」と訴える。

 植松容疑者の場合、稚拙な「優生思想」で理論武装し、衆議院議長に手紙を送り、犯行に及んだ。深谷教授は「日本には96年まで優生保護法があった。一皮むけば優生思想はまだ根強いのでは」と案じている。